進行膵癌に対する免疫療法としての骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植

「背景と目的」近年, 抗腫瘍免疫におけるT細胞の役割が注目されており, 同種造血幹細胞移植療法は, 移植されたドナー由来Tリンパ球によるgraft-versus-tumor(GVT)効果という同種免疫反応を利用して, 残存腫瘍細胞を死滅させようとする試みである. 最近, ドナーからの造血幹細胞の生着を得るには, 必ずしも大量の抗がん剤投与や全身放射線照射といった毒性のつよい骨髄破壊的な前処置は必要でなく, 拒絶を抑えるのに十分な免疫抑制を行うだけでも可能なことが明らかになり, 抗がん剤に低感受性である固形腫瘍において, 移植の前処置を生着を得るためだけの毒性の低いものにし(骨髄非破壊的前処置)...

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Published in膵臓 Vol. 25; no. 1; pp. 92 - 94
Main Authors 豊嶋, 崇徳, 伊藤, 鉄英, 宮本, 敏浩, 安部, 康信, 原田, 実根, 中野, 修治, 河邊, 顕, 長藤, 宏司, 馬場, 英司, 有田, 好之, 崔, 日承
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 2010
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.25.92

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Summary:「背景と目的」近年, 抗腫瘍免疫におけるT細胞の役割が注目されており, 同種造血幹細胞移植療法は, 移植されたドナー由来Tリンパ球によるgraft-versus-tumor(GVT)効果という同種免疫反応を利用して, 残存腫瘍細胞を死滅させようとする試みである. 最近, ドナーからの造血幹細胞の生着を得るには, 必ずしも大量の抗がん剤投与や全身放射線照射といった毒性のつよい骨髄破壊的な前処置は必要でなく, 拒絶を抑えるのに十分な免疫抑制を行うだけでも可能なことが明らかになり, 抗がん剤に低感受性である固形腫瘍において, 移植の前処置を生着を得るためだけの毒性の低いものにし(骨髄非破壊的前処置), 移植片のもつGVT効果により腫瘍細胞を死滅させようとする試みが行われ, 腎癌をはじめ種々の固形腫瘍で有効例が報告されている1). 進展期の切除不能膵癌は, 進行が早く予後不良であり, 化学療法や放射線療法には限界があるため, ペプチドワクチン2)や活性化自己リンパ球3)等の免疫療法も模索されている.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.25.92