飼料用米,大麦,製茶加工残さの混合給与とその粉砕粒度の違いが暑熱環境下の肥育豚の発育,枝肉成績および肉質に及ぼす影響

暑熱環境下における豚の生産性の低下は,アミノ酸リジンの摂取量の減少や消化率の低下,酸化ストレス亢進など様々な要因が複合して引き起こされていると考えられる。そこで,アミノ酸リジンをトウモロコシよりも多く含むという,飼料用米および大麦の特性と国内で生産される低利用資源(製茶加工残さ)の機能性特性を有効に活用して,暑熱条件下での肥育豚の枝肉および肉質に及ぼす効果を中心に解析した。同時に,飼料用米と大麦の粉砕粒度の違いが枝肉および肉質等に及ぼす影響を調査した。供試豚は三元交雑種(LWD)去勢豚を用いて,コンクリート平床豚房で各試験区6頭群飼により暑熱期(6~9月)に肥育試験を行った。試験区は,市販飼料...

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Published in日本養豚学会誌 Vol. 49; no. 1; pp. 1 - 13
Main Authors 脇屋, 裕一郎, 大曲, 秀明, 山口, 妃鶴, 河原, 弘文, 宮崎, 秀雄, 明石, 真幸, 永渕, 成樹, 松本, 光史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本養豚学会 2012
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Summary:暑熱環境下における豚の生産性の低下は,アミノ酸リジンの摂取量の減少や消化率の低下,酸化ストレス亢進など様々な要因が複合して引き起こされていると考えられる。そこで,アミノ酸リジンをトウモロコシよりも多く含むという,飼料用米および大麦の特性と国内で生産される低利用資源(製茶加工残さ)の機能性特性を有効に活用して,暑熱条件下での肥育豚の枝肉および肉質に及ぼす効果を中心に解析した。同時に,飼料用米と大麦の粉砕粒度の違いが枝肉および肉質等に及ぼす影響を調査した。供試豚は三元交雑種(LWD)去勢豚を用いて,コンクリート平床豚房で各試験区6頭群飼により暑熱期(6~9月)に肥育試験を行った。試験区は,市販飼料のみを給与した対照区,市販飼料にトウモロコシを 15%添加した試験区 1,市販飼料に飼料用米10%と大麦5%を添加した試験区2,3(試験区2は飼料用米と大麦の粉砕粒度 2 mm以下,試験区3は粉砕粒度 2-5 mm)の4区を設置した。また,試験区1~3は大豆粕でCPおよびTDN充足率の調整を行い,さらに,製茶加工残さを肥育前期に2%,肥育後期に1%添加した。供試豚が 110 kgに達した時点でと畜して,枝肉調査,肉質の理化学特性の分析を行うとともに,最も高い肉質成績が得られた試験区と対照区とのロース肉の官能評価を行った。日増体量および飼料要求率等の発育成績では,試験区は市販飼料のみを給与した対照区と同等の結果が得られた。枝肉形質では,背脂肪厚(背)は対照区と比較して試験区が有意に薄くなることが確認された。肉質形質では,保水力,加熱損失等の物理性状や肉色は試験区間に差がほとんど確認されず,試験区は対照区と同等の成績が得られた。背脂肪内層の脂肪酸組成では有意な差は確認されなかったが,試験区2が他の試験区と比較して飽和脂肪酸含有率が減少する傾向に,また,不飽和脂肪酸については,C18:1が増加しC18:2が減少する傾向にあった。また,ロース肉の遊離アミノ酸含量についても,試験区2が他の試験区と比較して,グルタミン含量が増加する傾向となり,官能評価においても最も高い評価が得られた。以上の結果より,飼料米および麦を2 mm以下に粉砕して給与することで,肉質中の脂肪酸組成および遊離アミノ酸含量が改善し,また食味性もよく,製茶加工残さのカテキン効果により背脂肪厚が低減されることが示唆された。
ISSN:0913-882X
1881-655X
DOI:10.5938/youton.49.1