定量培養を用いた小児期上気道感染症における常在菌についての検討
冬季において上気道感染症の診断のもとに咽頭培養を実施された139名の小児を対象に, 病原菌と常在菌の関係を定量培養を用いて検討した. 培養はすべて抗生剤投与前に行った. S. Pyogenesの検出されたものでは抗溶連菌抗体価の上昇の有無による検討も行った. 病原菌としてはS. pyogenes, H. influenzae, S. aureus, S. pneumoniaeを, 常在菌としてはα 溶連菌, γ 溶連菌, ナイセリア属, ミクロコッカス属を対象とした. 139名中72名よりのべ87株の病原菌が検出された. S. pyogenesまたはS. pneumoniae検出群では病原菌非...
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Published in | 感染症学雑誌 Vol. 66; no. 8; pp. 1105 - 1112 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本感染症学会
01.08.1992
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Summary: | 冬季において上気道感染症の診断のもとに咽頭培養を実施された139名の小児を対象に, 病原菌と常在菌の関係を定量培養を用いて検討した. 培養はすべて抗生剤投与前に行った. S. Pyogenesの検出されたものでは抗溶連菌抗体価の上昇の有無による検討も行った. 病原菌としてはS. pyogenes, H. influenzae, S. aureus, S. pneumoniaeを, 常在菌としてはα 溶連菌, γ 溶連菌, ナイセリア属, ミクロコッカス属を対象とした. 139名中72名よりのべ87株の病原菌が検出された. S. pyogenesまたはS. pneumoniae検出群では病原菌非検出群に比べαおよびγ溶連菌の検出頻度が有意に低く, H. influenzae検出群ではγ溶連菌の検出頻度が有意に低く, ナイセリア属の検出頻度は有意に高かった. S. pyogenes検出群のうち, 抗体価陽性例では抗体価陰性例および病原菌非検出例に比べα溶連菌量は有意に減少しており, またγ溶連菌が検出される頻度は病原菌非検出例に比べ有意に低下していた. 溶連菌感染が証明された群で常在菌の有意の変化がみられたことは, invitroにおける常在菌の病原菌発育阻止作用を臨床的に支持するものであり, また他の病原菌検出例での常在菌の変化はこれらの菌でも病原性を発揮している可能性をうかがわせた. 常在菌の定量培養を行うことにより, 同時に出現する病原菌の病原性の推定にも役立つと考えられた. |
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ISSN: | 0387-5911 1884-569X |
DOI: | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.66.1105 |