胃炎を見直す―胃炎の病態を理解し,正しく分類し,適切な対処を行うために

胃炎の診断や分類は,自覚症状や内視鏡所見をもとに行われてきたが,Helicobacter pylori(以下,H. pylori)の発見により,H. pylori感染の有無と胃癌発生のリスクを評価することが主たる目的となった.また,H. pylori除菌後の胃粘膜や,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)等の薬剤による胃粘膜の変化等,真の胃炎ではない,新たな胃粘膜の所見が出現してきた.さらに,これまで日本では稀と考えられていたH. pylori感染とは無関係な自己免疫性胃炎(A型胃炎)も,日常臨床の場でしばしば経験されるようになった.胃炎の分類には,世界共通...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本内科学会雑誌 Vol. 106; no. 10; pp. 2188 - 2195
Main Authors 河本, 博文, 春間, 賢, 末廣, 満彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.10.2017
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.106.2188

Cover

More Information
Summary:胃炎の診断や分類は,自覚症状や内視鏡所見をもとに行われてきたが,Helicobacter pylori(以下,H. pylori)の発見により,H. pylori感染の有無と胃癌発生のリスクを評価することが主たる目的となった.また,H. pylori除菌後の胃粘膜や,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)等の薬剤による胃粘膜の変化等,真の胃炎ではない,新たな胃粘膜の所見が出現してきた.さらに,これまで日本では稀と考えられていたH. pylori感染とは無関係な自己免疫性胃炎(A型胃炎)も,日常臨床の場でしばしば経験されるようになった.胃炎の分類には,世界共通の基準としては「Updated Sydney System」が作成され,内視鏡分類だけでなく,胃炎の局在性や病理組織でのスケールを用いた評価が可能となった.日本では,これまで内視鏡や病理組織所見を中心に多くの分類が作成され,萎縮性胃炎の胃体部への広がりを評価する木村・竹本分類が最も用いられている. 最近では,これまでの胃炎診断学についての歴史的な背景を考慮し, H. pylori感染と胃癌のリスク評価を目的とした「胃炎の京都分類」が一般化しつつある.H. pylori感染を診断したときは除菌療法を積極的に行い,萎縮性胃炎が胃癌発生のリスクであることを考えて,内視鏡検査による経過観察を行う.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.106.2188