修復困難な外傷性胃破裂に対しDamage Control Surgeryで救命し得た1例

症例は84歳の男性。交通事故によるハンドル外傷と吐血のため救急搬送された。腹部CT検査では心窩部直下にfree airを認め,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。2回の開腹手術歴があり,来院時,抗血小板薬を内服中であった。手術は高度癒着のため時間を要した。幽門側胃切除,Billroth-Ⅱ法再建の状態であったが,胃空腸吻合部で輸入脚,輸出脚空腸の双方に破裂するような穿孔部を認めた。一期的再建を考慮するも残胃周囲の癒着は高度であり,長い手術時間と術中アシドーシスの進行を考慮し,一期的再建はせず救命を優先したDamage control surgery(以下,DCS)の方針とし,消化管を分断閉鎖...

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Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 38; no. 3; pp. 575 - 578
Main Authors 宮野, 省三, 北畠, 俊顕, 渡野邉, 郁雄, 須郷, 広之, 李, 慶文, 町田, 理夫, 児島, 邦明, 岩永, 直紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.03.2018
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.38.575

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Summary:症例は84歳の男性。交通事故によるハンドル外傷と吐血のため救急搬送された。腹部CT検査では心窩部直下にfree airを認め,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。2回の開腹手術歴があり,来院時,抗血小板薬を内服中であった。手術は高度癒着のため時間を要した。幽門側胃切除,Billroth-Ⅱ法再建の状態であったが,胃空腸吻合部で輸入脚,輸出脚空腸の双方に破裂するような穿孔部を認めた。一期的再建を考慮するも残胃周囲の癒着は高度であり,長い手術時間と術中アシドーシスの進行を考慮し,一期的再建はせず救命を優先したDamage control surgery(以下,DCS)の方針とし,消化管を分断閉鎖したまま手術を終了した。術後,経管栄養と胆汁返還による栄養管理を行い,全身状態の改善を待ち第89病日に胃空腸吻合術(Roux-en-Y再建)による再建術を施行し軽快退院となった。DCSは主に重症肝外傷に対する治療概念として提唱されたが,自験例のようにさまざまな重度外傷症例に対し有用な治療戦略と考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.38.575