東南アジアから輸入されるエンテロウイルスの実態調査
海外旅行者が日本国内に持ち込むエンテロウイルスの実態を知るために, 東南アジア各国を出発し名古屋空港に到着する航空機のトイレ汚水と下痢を申告した乗客の糞便からウイルスの分離を試みた. また, 分離されたウイルスの県内への伝播状況をみる目的から, 県下住民の抗体保有状況を調べた. 1. 1983年から3年間に42機の航空機の汚水を検査し, echo1型と29型ウイルスを各1株分離したが, ウイルスの由来国は東南アジア5か国の内フイリッピンのみであった. 2. 同じ3年間に181名の糞便からはCox. B4型及びB5型各1株, 同定不能1株, echo1型2株, 計5株を分離した. 分離した人の旅...
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Published in | 感染症学雑誌 Vol. 61; no. 9; pp. 1038 - 1044 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本感染症学会
01.09.1987
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Summary: | 海外旅行者が日本国内に持ち込むエンテロウイルスの実態を知るために, 東南アジア各国を出発し名古屋空港に到着する航空機のトイレ汚水と下痢を申告した乗客の糞便からウイルスの分離を試みた. また, 分離されたウイルスの県内への伝播状況をみる目的から, 県下住民の抗体保有状況を調べた. 1. 1983年から3年間に42機の航空機の汚水を検査し, echo1型と29型ウイルスを各1株分離したが, ウイルスの由来国は東南アジア5か国の内フイリッピンのみであった. 2. 同じ3年間に181名の糞便からはCox. B4型及びB5型各1株, 同定不能1株, echo1型2株, 計5株を分離した. 分離した人の旅行国は東南アジア8力国のうち, フイリッピン (4株) と台湾 (1株) であった. 3. 分離されたウイルスは日本に常在しているウイルスもあったがecho1型はわが国では稀に分離されるものであり, echo29型は全く分離報告のないウイルスであった. 4. ウイルスを分離した人は日本人旅行者で, 旅行先の季節は雨期に集中していた. 5. echo1型及びecho29型は抗体保有状況から, 県内に伝播した形跡は認めなかった. しかし, 感受性者が高率であったので, 海外旅行者はこの種のウイルスに選択的に感染して輸入される可能性が高い. |
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ISSN: | 0387-5911 1884-569X |
DOI: | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.61.1038 |