荒蕪肺を伴う続発性気管支動脈蔓状血管腫に対して左肺全摘術を施行した一例

症例は60歳男性.繰り返す喀血を主訴に前医を受診した.重症肺炎の既往があり,左肺機能の低下を指摘されていた.胸部CTで左肺全体の囊胞状変化と容積低下,気管支拡張を認めた.複数の気管支動脈が高度に拡張し大動脈弓下と左肺門部を蛇行していた.標的血管が多く著明な拡張を伴っていたため気管支動脈塞栓術は不可能と判断し手術を施行した.手術は肺動静脈の処理を先行し,異常血管の集簇切離を行うことで時間を短縮し出血を最小限にとどめた.左肺全摘術後,広背筋弁にて気管支断端を被覆した.出血量は1,040 mLであった.術後経過は良好で以降は喀血を認めていない.気管支動脈蔓状血管腫の手術では異常血管の脆弱性と易出血性...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 32; no. 4; pp. 458 - 463
Main Authors 門松, 由佳, 内山, 美佳, 川角, 佑太, 上野, 陽史, 宇佐, 美範恭, 森, 正一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.05.2018
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.32.458

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Summary:症例は60歳男性.繰り返す喀血を主訴に前医を受診した.重症肺炎の既往があり,左肺機能の低下を指摘されていた.胸部CTで左肺全体の囊胞状変化と容積低下,気管支拡張を認めた.複数の気管支動脈が高度に拡張し大動脈弓下と左肺門部を蛇行していた.標的血管が多く著明な拡張を伴っていたため気管支動脈塞栓術は不可能と判断し手術を施行した.手術は肺動静脈の処理を先行し,異常血管の集簇切離を行うことで時間を短縮し出血を最小限にとどめた.左肺全摘術後,広背筋弁にて気管支断端を被覆した.出血量は1,040 mLであった.術後経過は良好で以降は喀血を認めていない.気管支動脈蔓状血管腫の手術では異常血管の脆弱性と易出血性のため出血コントロールに苦慮する事がある.我々は,手術時の異常血管切離の手順と方法に工夫を加えることで高度に拡張した続発性気管支動脈蔓状血管腫の手術を比較的少ない出血量で手術を終えることができた.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.32.458