冠動脈バイパス術後遠隔期に行った心拍動下大動脈弁置換術の1経験例

冠動脈バイパス術後の再手術では,開存したグラフトの損傷は致命的になる場合があり非常に注意が必要である.また心停止を要する場合は確実な心筋保護液注入のための処置が必要となり,術者にとっては複雑でストレスの多い手術といえる.今回冠動脈バイパス術後遠隔期に大動脈弁狭窄症が進行した症例に対し心拍動下大動脈弁置換術を選択し良好な成績を治められたので報告する.症例は75歳男性.66歳時に他院で冠動脈バイパス術(LITA-LAD,SVG-OM-PL,SVG-RCA)を受けた.冠動脈は3枝とも完全閉塞しており,順行性の心筋保護液注入は困難である上,左上大静脈遺残も合併しており逆行性心筋保護注入も不確実な状態で...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 40; no. 5; pp. 251 - 254
Main Authors 横山, 雄一郎, 佐藤, 晴瑞, 井村, 真里
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2011
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Summary:冠動脈バイパス術後の再手術では,開存したグラフトの損傷は致命的になる場合があり非常に注意が必要である.また心停止を要する場合は確実な心筋保護液注入のための処置が必要となり,術者にとっては複雑でストレスの多い手術といえる.今回冠動脈バイパス術後遠隔期に大動脈弁狭窄症が進行した症例に対し心拍動下大動脈弁置換術を選択し良好な成績を治められたので報告する.症例は75歳男性.66歳時に他院で冠動脈バイパス術(LITA-LAD,SVG-OM-PL,SVG-RCA)を受けた.冠動脈は3枝とも完全閉塞しており,順行性の心筋保護液注入は困難である上,左上大静脈遺残も合併しており逆行性心筋保護注入も不確実な状態であった.グラフトからほぼ全心筋血流が還流されていたため心拍動下大動脈弁置換術を選択した.このため癒着剥離は大動脈と右心房周囲の最小限に留められ,グラフトの剥離や遮断などの操作もいっさい省略することができた.大動脈弁手術は冠動脈バイパス術のように心拍動下手術が第1選択になることは現時点では考えにくいが,このような症例には非常に有用であり,一つのオプションとして持っておいてもよい手技と考えられた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.40.251