右上葉切除術後の右下葉切除術~中葉の温存を選択した1症例

右上葉切除後遠隔期に生じた右下葉肺腫瘍に対する根治術式として肺葉切除が必要な場合には右中葉を温存すべきか右残肺全摘を施行すべきかの議論がある.当科で右中葉を温存した1例について文献考察と共に検討した.症例は74歳男性.18歳時に肺結核に対して右上葉切除歴があり,62歳時に慢性膨張性血腫に対して右下葉切除術を施行し,術後経過は良好であった.下葉切除後10年目頃から右中葉に肺炎を反復し,有瘻性膿胸を来たしたため開窓術を施行して感染を制御した.術後,日常生活動作は自立したが,時に右中葉の肺炎再燃を来たしている.過去の報告では残肺全摘と比較して右中葉を温存する方が患者の負担が少ないとされるが,本報告の...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 32; no. 6; pp. 764 - 770
Main Authors 穴山, 貴嗣, 川本, 常喬, 渡橋, 和政, 宮崎, 涼平, 廣橋, 健太郎, 岡田, 浩晋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.09.2018
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.32.764

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Summary:右上葉切除後遠隔期に生じた右下葉肺腫瘍に対する根治術式として肺葉切除が必要な場合には右中葉を温存すべきか右残肺全摘を施行すべきかの議論がある.当科で右中葉を温存した1例について文献考察と共に検討した.症例は74歳男性.18歳時に肺結核に対して右上葉切除歴があり,62歳時に慢性膨張性血腫に対して右下葉切除術を施行し,術後経過は良好であった.下葉切除後10年目頃から右中葉に肺炎を反復し,有瘻性膿胸を来たしたため開窓術を施行して感染を制御した.術後,日常生活動作は自立したが,時に右中葉の肺炎再燃を来たしている.過去の報告では残肺全摘と比較して右中葉を温存する方が患者の負担が少ないとされるが,本報告のように残存する右中葉の肺炎が問題となる場合がある.中葉温存症例では,術後早期のみならず遠隔期にも合併症が生じうることを念頭に置いて,長期間の経過観察を行うことが望ましい.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.32.764