術前精査で組織学的に扁平上皮癌が疑われた肺放線菌症の1手術例

81歳男性.咳嗽,血痰,胸部X線異常影により当院を紹介受診.CTで右肺S6-10に空洞を伴う不整な腫瘤影を認め,気管支鏡検査でB6の不整な粘膜組織から扁平上皮癌を疑わせる細胞を検出し,cT2aN0M0 stage IBの原発性肺癌の疑いで右肺中下葉切除を実施した.術後病理診断では腫瘤は肺放線菌症で,B6気管支上皮には高度異形成を認めた.肺放線菌症は比較的稀で,特異的画像所見もなく確定診断が困難なため,肺癌を疑い手術切除されてから診断に至ることが多い.しかし内科的治療が奏効しやすいため,高齢者や低肺機能症例では手術回避を目指し術前に両者を鑑別する努力が必要で,生検組織の診断においては悪性組織と炎...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 26; no. 4; pp. 422 - 427
Main Authors 岡田, 英, 保坂, 靖子, 富樫, 賢一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 2012
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Summary:81歳男性.咳嗽,血痰,胸部X線異常影により当院を紹介受診.CTで右肺S6-10に空洞を伴う不整な腫瘤影を認め,気管支鏡検査でB6の不整な粘膜組織から扁平上皮癌を疑わせる細胞を検出し,cT2aN0M0 stage IBの原発性肺癌の疑いで右肺中下葉切除を実施した.術後病理診断では腫瘤は肺放線菌症で,B6気管支上皮には高度異形成を認めた.肺放線菌症は比較的稀で,特異的画像所見もなく確定診断が困難なため,肺癌を疑い手術切除されてから診断に至ることが多い.しかし内科的治療が奏効しやすいため,高齢者や低肺機能症例では手術回避を目指し術前に両者を鑑別する努力が必要で,生検組織の診断においては悪性組織と炎症による高度異形成の鑑別が重要である.また肺癌が合併した放線菌症例もあり,内科的治療の効果によっては再度精査し,外科的切除を検討実施する必要がある.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.26.422