Branched Graft Inversion technique を用いた弓部全置換術の1治験例
胸部大動脈瘤(TAA)に対する弓部全置換術(TAR)において,末梢側吻合は深く視野に制限があるため,運針や止血に難渋することがある.4分枝人工血管を直接吻合する方法か,下行大動脈にelephant trunkを挿入して末梢側吻合を行い,4分枝人工血管と吻合するstepwise法が主流である.しかし,吻合箇所が増えるため出血のリスクは増す.今回われわれは,stepwise法と同等の視野で,人工血管どうしの吻合を必要としない,Branched Graft Inversion techniqueを考案した.症例は65歳の男性.嚢状型TAA(最大径42 mm)と診断され,手術目的に入院した.胸骨正中切...
Saved in:
Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 40; no. 4; pp. 168 - 171 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
2011
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0285-1474 1883-4108 |
DOI | 10.4326/jjcvs.40.168 |
Cover
Summary: | 胸部大動脈瘤(TAA)に対する弓部全置換術(TAR)において,末梢側吻合は深く視野に制限があるため,運針や止血に難渋することがある.4分枝人工血管を直接吻合する方法か,下行大動脈にelephant trunkを挿入して末梢側吻合を行い,4分枝人工血管と吻合するstepwise法が主流である.しかし,吻合箇所が増えるため出血のリスクは増す.今回われわれは,stepwise法と同等の視野で,人工血管どうしの吻合を必要としない,Branched Graft Inversion techniqueを考案した.症例は65歳の男性.嚢状型TAA(最大径42 mm)と診断され,手術目的に入院した.胸骨正中切開でアプローチし,上行大動脈動脈および右大腿動脈送血,上下大静脈脱血で体外循環を確立した.順行性心筋保護を行い,25℃で下肢循環を停止し,順行性選択的脳灌流を行った.末梢側吻合は,裏返した4分枝人工血管を下行大動脈に挿入し,マットレス縫合および連続縫合で断端形成した.その後,人工血管を内腔から引き出し,頸部分枝の再建および中枢側吻合を行った.Branched Graft Inversion techniqueは,比較的良好な視野で,かつ1回で末梢側吻合が行える方法である.TAAに対するTARにおいて,有効な補助手段になり得ると思われる. |
---|---|
ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
DOI: | 10.4326/jjcvs.40.168 |