アンチトロンビンIII欠乏症による多発性静脈血栓症の1例

患者は53歳,女性.上腹部痛,嘔吐および発熱を認め当院救急外来受診後,加療目的に入院となった.胸部・腹部造影CTを施行したところ,門脈,上腸間膜静脈,下大静脈,左内腸骨静脈,そして左肺動脈根部に血栓を認め,小腸壁は全周性に肥厚し,腹水も認められた.腸管の鬱血性壊死を疑い,IVCフィルターを留置後,緊急手術となった.約180cmにわたり空腸の鬱血性壊死が認められたため,壊死腸管を切除し,吻合は施行せずに腸瘻とした.血液凝固検査でAT-III欠乏症と診断されたため,術後より乾燥濃縮人AT-III製剤,ヘパリン,ウロキナーゼの投与を行い,一時肺血栓塞栓症の悪化を認めたが徐々に症状改善,血栓縮小を認め...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 72; no. 6; pp. 1378 - 1382
Main Authors 長崎, 和仁, 尾原, 秀明, 朝見, 淳規, 大住, 幸司, 窪地, 淳, 北川, 雄光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2011
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.72.1378

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Summary:患者は53歳,女性.上腹部痛,嘔吐および発熱を認め当院救急外来受診後,加療目的に入院となった.胸部・腹部造影CTを施行したところ,門脈,上腸間膜静脈,下大静脈,左内腸骨静脈,そして左肺動脈根部に血栓を認め,小腸壁は全周性に肥厚し,腹水も認められた.腸管の鬱血性壊死を疑い,IVCフィルターを留置後,緊急手術となった.約180cmにわたり空腸の鬱血性壊死が認められたため,壊死腸管を切除し,吻合は施行せずに腸瘻とした.血液凝固検査でAT-III欠乏症と診断されたため,術後より乾燥濃縮人AT-III製剤,ヘパリン,ウロキナーゼの投与を行い,一時肺血栓塞栓症の悪化を認めたが徐々に症状改善,血栓縮小を認めたため,術54病日に腸瘻閉鎖・腸管吻合術を施行した.術後はワーファリン投与に切り替え,現在術後8年になるが血栓症の再発を認めていない.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.72.1378