完全胸腔鏡下に切除した特発性奇静脈瘤の2例

稀な特発性奇静脈瘤の切除例を2例経験したので報告する.症例1は50歳代,男性.検診で25 mm大の右肺門部腫瘤影を指摘された.4年後腫瘤径は35 mmと増大し,造影CT, MRIの所見から奇静脈瘤と診断された.血栓症や破裂の危険性を考慮し,胸腔鏡下に瘤切除を行った.症例2は70歳代,女性.原発性肺癌に対し胸腔鏡下右上葉切除術を施行したが,術中奇静脈弓に限局する15 mm大の瘤を認めたため切除した.いずれの症例も,術後に合併症を認めず経過良好である.特発性奇静脈瘤は稀な疾患で,多くは無症状である.治療法には一定の見解はないものの,瘤内血栓の流出による肺血栓塞栓症や瘤破裂の可能性が指摘されており,...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 29; no. 1; pp. 101 - 105
Main Authors 吉田, 久美子, 松田, 英祐, 田中, 俊樹, 田尾, 裕之, 林, 達朗, 岡部, 和倫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 2015
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Summary:稀な特発性奇静脈瘤の切除例を2例経験したので報告する.症例1は50歳代,男性.検診で25 mm大の右肺門部腫瘤影を指摘された.4年後腫瘤径は35 mmと増大し,造影CT, MRIの所見から奇静脈瘤と診断された.血栓症や破裂の危険性を考慮し,胸腔鏡下に瘤切除を行った.症例2は70歳代,女性.原発性肺癌に対し胸腔鏡下右上葉切除術を施行したが,術中奇静脈弓に限局する15 mm大の瘤を認めたため切除した.いずれの症例も,術後に合併症を認めず経過良好である.特発性奇静脈瘤は稀な疾患で,多くは無症状である.治療法には一定の見解はないものの,瘤内血栓の流出による肺血栓塞栓症や瘤破裂の可能性が指摘されており,瘤切除が行われることが多い.瘤化が奇静脈弓部に限局し,瘤内血栓のないものについては,胸腔鏡下に瘤切除が施行可能であると考えられる.治療方針の決定には,血管3D-CTが有用である.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.29.101