フツリン酸ガラスの表面に及ぼすNaCl電解水の影響

• Published in: 砥粒加工学会誌 Vol. 64; no. 6; pp. 314 - 319
• Main Authors: 佐藤, 運海, 瀧本, 剛史, 馬場, 隆充
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 社団法人 砥粒加工学会 01.06.2020
• ISSN: 0914-2703; 1880-7534
• DOI: 10.11420/jsat.64.314

本研究は，化学薬液の代わりに表面洗浄および金属表面エッチングなどに優れているNaCl電解水をフツリン酸ガラスの研磨加工および洗浄工程に応用するために，フツリン酸ガラスの表面に及ぼすNaCl電解水のエッチング作用，ミクロ形状への影響および研磨材微粒子の除去洗浄性能について実験検討を行った．その結果，まずエッチング作用について，NaCl電解酸化水は，HCl溶液より強いエッチング作用があり，NaCl電解還元水は，NaOH溶液と同様にエッチング作用がほとんどない．つぎに，試料片表面のミクロ形状に対して，電解還元水はNaOH溶液とほぼ同様に，浸漬時間が20分程度で短い場合，影響がないが，電解酸化水およびHCl溶液は，5分程度の浸漬でも表面を粗くする可能性がある．くわえて，超音波を併用した場合も，電解還元水は試料片表面のミクロ形状に影響を与えない．最後に，研磨材微粒子の除去洗浄性能について，電解還元水は，現状の洗浄薬液と比べ，同等以上に洗浄効果があり，同様のpH値を有するNaOH溶液と比べ，洗浄後の試料片表面に研磨材微粒子の残留量が少ない．本研究により，NaCl電解酸化水はフツリン酸ガラス表面のエッチングや研磨加工，NaCl電解還元水は研磨材微粒子の除去洗浄に応用できる示唆を得た．