保存的治療により改善した酸性洗浄剤による腐食性食道炎の1例

症例は20代の男性,統合失調症.2006年末,自殺企図でサンポール(トイレ用洗浄剤,9.5%塩酸)およびハミング(衣類用柔軟仕上げ剤,界面活性剤)を内服し近医に救急搬送された.入院時に嘔吐と嗄声を認めた.上部消化管内視鏡検査にてGrade2bの所見を咽頭喉頭,食道,胃に認めたが,ICU入室し保存的治療で急性期を乗り切った.希死念慮が強く,精神科転科し精神面の治療を行った後,空腸瘻を造設,全身状態の改善と精神状態の安定を待って,両親の住む地元に転院し,経腸栄養管理を継続した.幸い食道狭窄は軽度であり,徐々に改善したため拡張術や手術は必要としなかった.経口摂取と経腸栄養により十分な栄養摂取が可能で...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 69; no. 7; pp. 1658 - 1662
Main Authors 丸山, 起誉幸, 佐藤, 雄亮, 宇佐美, 修悦, 林, 香織, 小川, 純一, 本山, 悟
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2008
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.69.1658

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Summary:症例は20代の男性,統合失調症.2006年末,自殺企図でサンポール(トイレ用洗浄剤,9.5%塩酸)およびハミング(衣類用柔軟仕上げ剤,界面活性剤)を内服し近医に救急搬送された.入院時に嘔吐と嗄声を認めた.上部消化管内視鏡検査にてGrade2bの所見を咽頭喉頭,食道,胃に認めたが,ICU入室し保存的治療で急性期を乗り切った.希死念慮が強く,精神科転科し精神面の治療を行った後,空腸瘻を造設,全身状態の改善と精神状態の安定を待って,両親の住む地元に転院し,経腸栄養管理を継続した.幸い食道狭窄は軽度であり,徐々に改善したため拡張術や手術は必要としなかった.経口摂取と経腸栄養により十分な栄養摂取が可能であったが統合失調症の治療に時間を費やし第154病日に退院した.受傷後15カ月では消化器症状を認めていない.空腸瘻造設は低侵襲手術であり,受傷後早期から有用と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.69.1658