肺結節で発見された切除12年目に生じた膵癌オリゴ転移の1切除例

症例は,63歳,男性.膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行された12年後に,胸部単純CTで右肺上葉に胸膜陥入像を伴う充実性結節影とその近傍の小結節影を指摘された.PET/CTで同部位と左鼠径リンパ節に強い集積を認め,経気管支肺生検では腺癌の診断で膵癌の肺転移の可能性も示唆された.しかし,臨床経過と画像所見から原発性肺癌も否定できなかったため,診断的治療を目的として胸腔鏡下右上葉切除術と左鼠径リンパ節切除を施行した.病理組織診断結果は,いずれも膵癌の肺転移であった.術後化学療法を行い,術後12ヵ月間無再発生存中である.膵癌は一般に進行が早く,遠隔転移があれば通常切除適応はなく,化学療法が選択...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 34; no. 6; pp. 661 - 665
Main Authors 谷口, 大輔, 永安, 武, 土谷, 智史, 福岡, 順也, 石田, 佳央理, 木谷, 聡一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.09.2020
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.34.661

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Summary:症例は,63歳,男性.膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行された12年後に,胸部単純CTで右肺上葉に胸膜陥入像を伴う充実性結節影とその近傍の小結節影を指摘された.PET/CTで同部位と左鼠径リンパ節に強い集積を認め,経気管支肺生検では腺癌の診断で膵癌の肺転移の可能性も示唆された.しかし,臨床経過と画像所見から原発性肺癌も否定できなかったため,診断的治療を目的として胸腔鏡下右上葉切除術と左鼠径リンパ節切除を施行した.病理組織診断結果は,いずれも膵癌の肺転移であった.術後化学療法を行い,術後12ヵ月間無再発生存中である.膵癌は一般に進行が早く,遠隔転移があれば通常切除適応はなく,化学療法が選択される.しかし,膵癌においても一部進行の緩徐な集団があり,切除適応となる膵癌オリゴ転移に相当する症例がある.慎重に検討すれば,膵癌の肺転移に対する外科的切除は有効な治療選択肢の一つになると考えられた.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.34.661