特発性大網出血の1例

症例は31歳,男性.前日夕方からの心窩部痛を主訴に受診.上腹部は板状硬で腹部全体に軽度の反跳痛を認めた.血液検査ではWBC 16,700/μl,CRP 0.30mg/dl.立位単純X線では有意な所見.腹部造影CTではDouglas窩,肝周囲の腹水および胃大彎下方に接する辺縁不整な腫瘤像を認め,内部は不均一で一部高いCT値を示していた.以上より汎発性腹膜炎,胃潰瘍穿孔疑いと診断し,緊急開腹術を施行.約1lの腹腔内出血があり,大網内に新鮮血腫を認めた.血腫を含め大網を部分的に切除し,腹腔内を洗浄した.術後経過は良好であった.病理学的検査では大網に梗塞や捻転を認めず,外傷の既往や出血性素因を示唆する...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 69; no. 9; pp. 2382 - 2386
Main Authors 加藤, 直人, 藤沢, 順, 石川, 善啓, 松川, 博史, 澤崎, 翔, 藤井, 慶太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2008
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.69.2382

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Summary:症例は31歳,男性.前日夕方からの心窩部痛を主訴に受診.上腹部は板状硬で腹部全体に軽度の反跳痛を認めた.血液検査ではWBC 16,700/μl,CRP 0.30mg/dl.立位単純X線では有意な所見.腹部造影CTではDouglas窩,肝周囲の腹水および胃大彎下方に接する辺縁不整な腫瘤像を認め,内部は不均一で一部高いCT値を示していた.以上より汎発性腹膜炎,胃潰瘍穿孔疑いと診断し,緊急開腹術を施行.約1lの腹腔内出血があり,大網内に新鮮血腫を認めた.血腫を含め大網を部分的に切除し,腹腔内を洗浄した.術後経過は良好であった.病理学的検査では大網に梗塞や捻転を認めず,外傷の既往や出血性素因を示唆する所見もなく特発性大網出血と診断した.特発性大網出血の報告は稀であり,術前診断が難しい.急性腹症の鑑別として本疾患も念頭におく必要があると考えられたため若干の文献的考察とともに報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.69.2382