シスプラチン/リピオドール懸濁液による肝動脈化学療法後に急速に浸潤性増殖をきたし,診断に苦慮した肝細胞癌の1例

症例は66歳男性.2005年より肝細胞癌に対して3回の肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行している.2008年7月多発肝細胞癌に対してシスプラチン/リピオドール懸濁液による肝動注化学療法(Lip-TAI)を施行した.このときのCTでは肝のS3,S4,S8に多発する合計5個の多血性の肝細胞癌を認めたが,いずれの大きさも2 cm以下であった.治療後の経過は良好であったが,3カ月後の10月上腹部痛と腹部膨満感と黄疸のため再入院となった.入院後施行した腹部造影CTでは肝S4を中心に境界不明瞭な乏血性の腫瘍が拡がり,門脈本幹には腫瘍塞栓を認めた.腫瘍の急速な増大と診断したが全身状態は悪化し,入院から19...

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Published in肝臓 Vol. 51; no. 8; pp. 447 - 453
Main Authors 山川, 光徳, 鈴木, 恒治, 平田, 慎也, 松尾, 拓, 伊藤, 純一, 五十嵐, 貴宏, 王, 玉来, 齋藤, 吉彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2010
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.51.447

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Summary:症例は66歳男性.2005年より肝細胞癌に対して3回の肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行している.2008年7月多発肝細胞癌に対してシスプラチン/リピオドール懸濁液による肝動注化学療法(Lip-TAI)を施行した.このときのCTでは肝のS3,S4,S8に多発する合計5個の多血性の肝細胞癌を認めたが,いずれの大きさも2 cm以下であった.治療後の経過は良好であったが,3カ月後の10月上腹部痛と腹部膨満感と黄疸のため再入院となった.入院後施行した腹部造影CTでは肝S4を中心に境界不明瞭な乏血性の腫瘍が拡がり,門脈本幹には腫瘍塞栓を認めた.腫瘍の急速な増大と診断したが全身状態は悪化し,入院から19日後に肝不全で死の転帰をとった.剖検では腫瘍はほぼ全肝に浸潤性に増殖し,両肺と骨髄には微小な転移が多発していた.組織学的には多形性に富む細胞からなり,策状構造と偽腺管構造を示す低分化型肝細胞癌であった.肝動脈化学療法後に急速に増大する肝細胞癌は稀であるが,常にその可能性を念頭において経過を見る必要があると思われた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.51.447