魚骨による十二指腸水平脚穿通の1例

症例は70歳,男性.1週間前に鯛のあら煮を摂取し,2日前から上腹部痛を生じて来院した.圧痛は左上腹部に限局しており,腹部CTでは十二指腸水平脚付近に約10mmの線状の高吸収域とその周囲脂肪組織内に腸管外ガス像を認めた.上部消化管内視鏡を施行したが,腸管内腔側には異物を確認できなかったために摘出できなかった.保存的治療で腹痛や炎症所見が改善した後,異物の摘出を目的として開腹手術を施行した.Treitz靱帯付近を中心に約4cmにわたる小腸とその周囲脂肪組織が腫脹しており,この中に異物が存在していると考えられた.同部位を切除する方針で,Treitz靱帯周囲を剥離すると,空腸腸間膜内に約10mmの魚骨...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 71; no. 6; pp. 1518 - 1523
Main Authors 黒田, 武志, 福山, 充俊, 井内, 正裕, 福田, 洋, 青木, 克哲, 小笠原, 邦夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2010
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Summary:症例は70歳,男性.1週間前に鯛のあら煮を摂取し,2日前から上腹部痛を生じて来院した.圧痛は左上腹部に限局しており,腹部CTでは十二指腸水平脚付近に約10mmの線状の高吸収域とその周囲脂肪組織内に腸管外ガス像を認めた.上部消化管内視鏡を施行したが,腸管内腔側には異物を確認できなかったために摘出できなかった.保存的治療で腹痛や炎症所見が改善した後,異物の摘出を目的として開腹手術を施行した.Treitz靱帯付近を中心に約4cmにわたる小腸とその周囲脂肪組織が腫脹しており,この中に異物が存在していると考えられた.同部位を切除する方針で,Treitz靱帯周囲を剥離すると,空腸腸間膜内に約10mmの魚骨を認めた.十二指腸水平脚と空腸を部分切除し,端々吻合で再建した.本邦での魚骨による十二指腸穿孔・穿通の報告例は本症例を含めて26例であり,そのうち十二指腸水平脚に生じた例は8例であり,稀な1例と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.71.1518