中大脳動脈瘤破裂による非外傷性急性硬膜下血腫の1例

大多数の急性硬膜下血腫は外傷由来であるが,非外傷性急性硬膜下血腫の原因として破裂脳動脈瘤を経験することがまれにある。われわれの経験した中大脳動脈瘤破裂による非外傷性急性硬膜下血腫の 1 例を文献的考察とともに報告する。症例:74歳の男性。早朝ラジオ体操中に,突然右側頭部痛を訴え,当院へ搬送された。CTでは,右前側頭部に薄い急性硬膜下血腫を認めた。意識は清明で,神経学的脱落症状もなく,また明らかな外傷歴もみられなかった。早急に急性硬膜下血腫の原因検索を行うことにしたが,突然意識障害が進行しGCS E1V1M3昏睡状態となった。再度CTを施行すると,硬膜下血腫の増大と著明なmidline shif...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 19; no. 2; pp. 125 - 130
Main Authors 榊原, 陽太郎, 大塩, 恒太郎, 平本, 準, 星, 晶子, 小野寺, 英孝, 橋本, 卓雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2008
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:大多数の急性硬膜下血腫は外傷由来であるが,非外傷性急性硬膜下血腫の原因として破裂脳動脈瘤を経験することがまれにある。われわれの経験した中大脳動脈瘤破裂による非外傷性急性硬膜下血腫の 1 例を文献的考察とともに報告する。症例:74歳の男性。早朝ラジオ体操中に,突然右側頭部痛を訴え,当院へ搬送された。CTでは,右前側頭部に薄い急性硬膜下血腫を認めた。意識は清明で,神経学的脱落症状もなく,また明らかな外傷歴もみられなかった。早急に急性硬膜下血腫の原因検索を行うことにしたが,突然意識障害が進行しGCS E1V1M3昏睡状態となった。再度CTを施行すると,硬膜下血腫の増大と著明なmidline shiftを認めたため,緊急に開頭血腫除去術を施行した。血腫は厚く,広く脳を圧迫していたが,脳表に出血している血管や外傷性変化はみられなかった。シルビウス裂上に一部くも膜に癒着する血塊が存在し,拍動し動脈瘤様にみえたが無理な剥離操作は行わなかった。術後施行した3D-CTangiographyで,右中大脳動脈分岐部に径約22mmの動脈瘤を認めた。再び前側頭開頭を行いclipping術を施行した。術後経過は良好で,約 3 週間後に神経脱落症状なく自宅退院した。結語:本例のように切迫脳ヘルニアを認めるような重症例においては,緊急の治療が優先されるが,外傷歴のない急性硬膜下血腫においては,潜在する基礎疾患の検索も早期に行うべきである。出血源が脳動脈瘤の場合,早急な開頭減圧術とclipping術により良好な予後が期待できる。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.19.125