腺腫成分を伴った原発性小腸癌の1例

症例は72歳,男性.貧血,便潜血陽性を指摘され,上・下部内視鏡検査を行ったが,出血源を特定できず,精査加療目的で入院となった.腹部CTで小腸の壁肥厚を認めたため,カプセル内視鏡で検索したところ,出血を伴う腫瘍を認めた.ダブルバルーン内視鏡では,Treitz靱帯より約40cmの空腸に全周性狭窄を来たす腫瘍を認め,生検では高~中分化腺癌であった.小腸造影検査でもほぼ同部位に腫瘍を認め,血管造影検査では第2空腸動脈に支配される腫瘍に一致して造影効果を認めた.以上より原発性小腸癌と診断し,空腸部分切除術を行った.切除標本では全周性,57×29mmの潰瘍限局型腫瘍であり,病理組織学的には高分化腺癌で漿膜...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 70; no. 6; pp. 1740 - 1743
Main Authors 南村, 圭亮, 梅村, 彰尚, 平田, 泰, 菊一, 雅弘, 森, 正也, 若杉, 正樹, 坂本, 昌義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2009
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.70.1740

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Summary:症例は72歳,男性.貧血,便潜血陽性を指摘され,上・下部内視鏡検査を行ったが,出血源を特定できず,精査加療目的で入院となった.腹部CTで小腸の壁肥厚を認めたため,カプセル内視鏡で検索したところ,出血を伴う腫瘍を認めた.ダブルバルーン内視鏡では,Treitz靱帯より約40cmの空腸に全周性狭窄を来たす腫瘍を認め,生検では高~中分化腺癌であった.小腸造影検査でもほぼ同部位に腫瘍を認め,血管造影検査では第2空腸動脈に支配される腫瘍に一致して造影効果を認めた.以上より原発性小腸癌と診断し,空腸部分切除術を行った.切除標本では全周性,57×29mmの潰瘍限局型腫瘍であり,病理組織学的には高分化腺癌で漿膜下組織まで浸潤があり,リンパ節転移を認めなかった.腺癌の辺縁部の一部に管状腺腫を認めた.腺腫成分を伴った原発性小腸癌の報告は少なく,小腸癌においてもadenoma-carcinoma sequenceの存在を示唆する興味深い症例であると思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.70.1740