診断的腹腔鏡が有用であったα-グルコシダーゼ阻害剤による腸管気腫症の1例

症例は89歳,女性.腹痛,血性下痢便を主訴に来院した.腹部造影CTで右下腹部,回腸遠位端を中心に腸管外ガス像を認めたが理学所見に乏しく診断的腹腔鏡を施行した.腹腔鏡検査では漿膜下にガスを含んだ微小な腸管気腫像が限局性に複数認められたが,腹膜炎・穿孔所見を認めないため開腹手術は施行せず保存的経過観察とした.経過は良好であり第5病日に退院となった.しかし2週間後に再び腹痛・下痢を主訴に来院し,腹部CTで門脈気腫,腸管気腫症(Pneumatosis intestinalis:以下PI)を認めた.文献的考察から原因としてα-グルコシダーゼ阻害剤(以下:α GIs)が疑われ,内服を中止することで軽快した...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 72; no. 8; pp. 2061 - 2065
Main Authors 松田, 睦史, 清水, 正幸, 山崎, 元靖, 松本, 松圭, 長島, 敦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2011
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.72.2061

Cover

More Information
Summary:症例は89歳,女性.腹痛,血性下痢便を主訴に来院した.腹部造影CTで右下腹部,回腸遠位端を中心に腸管外ガス像を認めたが理学所見に乏しく診断的腹腔鏡を施行した.腹腔鏡検査では漿膜下にガスを含んだ微小な腸管気腫像が限局性に複数認められたが,腹膜炎・穿孔所見を認めないため開腹手術は施行せず保存的経過観察とした.経過は良好であり第5病日に退院となった.しかし2週間後に再び腹痛・下痢を主訴に来院し,腹部CTで門脈気腫,腸管気腫症(Pneumatosis intestinalis:以下PI)を認めた.文献的考察から原因としてα-グルコシダーゼ阻害剤(以下:α GIs)が疑われ,内服を中止することで軽快した.以降α GIsの内服を中止し半年間再発は認めていない.α GIsによるPIの本邦報告例は9例と少なく,門脈気腫像を認めたのは自験例を含め2例であった.このような稀な疾患に対し,初期から確定診断することは困難であり,診断的腹腔鏡検査で不要な試験開腹を回避できる.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.72.2061