聴覚に関わる社会医学的諸問題 ストレスと感音難聴に関する考察―特に突発性難聴との関係について

いわゆるストレスがどのようにして蝸牛に限局した障害を惹起するかは不明である。一方, 心筋梗塞などではストレスが視床下部-下垂体-副腎軸, 交感神経系を介した免疫系の変化を生じ, 病態の形成に関与していることが分かっている。本稿ではまずストレスがどのようにして免疫系の変化, 睡眠障害, 慢性疲労をもたらすかを紹介する。そしてこうした変化がどのようにして突発性難聴を生じるか, 血管内皮障害仮説やStress response仮説を用いて考察する。特にStress response仮説の中心となる転写因子NF-κBの蝸牛外側壁における異常活性化に関しては詳しく論じる。また, この仮説が聴力の低下に関...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 56; no. 2; pp. 137 - 152
Main Authors 神崎, 仁, 増田, 正次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 28.04.2013
日本聴覚医学会
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Summary:いわゆるストレスがどのようにして蝸牛に限局した障害を惹起するかは不明である。一方, 心筋梗塞などではストレスが視床下部-下垂体-副腎軸, 交感神経系を介した免疫系の変化を生じ, 病態の形成に関与していることが分かっている。本稿ではまずストレスがどのようにして免疫系の変化, 睡眠障害, 慢性疲労をもたらすかを紹介する。そしてこうした変化がどのようにして突発性難聴を生じるか, 血管内皮障害仮説やStress response仮説を用いて考察する。特にStress response仮説の中心となる転写因子NF-κBの蝸牛外側壁における異常活性化に関しては詳しく論じる。また, この仮説が聴力の低下に関わっていた可能性のあるステロイド依存性難聴症例も提示する。ストレスはメニエール病の発症にも関与していることが知られている。このことはストレス以外にも様々な要因が存在し, 異なる病態を形成していることを示しており, それが何であるかが今後の検討課題である。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.56.137