膵頭十二指腸切除術後に肝性脳症を発症したmesocaval shuntに対して塞栓術を施行した1例

45歳男性.8年前に腫瘤形成性膵炎に対し膵頭十二指腸切除術が施行された.3年前より頭呆感,異常行動,健忘などの精神症状や羽ばたき振戦が出現し高アンモニア血症による肝性脳症と診断された.腹部造影CTにて右精巣静脈を経由する上腸間膜静脈-下大静脈短絡(mesocaval shunt)を認めた.経皮経肝門脈造影では,SMV本幹に術後変化と思われる壁不整を認めるも有意な狭窄や圧較差を認めなかった.右内頚静脈から右精巣静脈経由にて短絡部を経カテーテル的に金属コイルにて塞栓した.血中アンモニア値は翌日より低下し,4年の観察期間中無投薬で正常値を保っている.また精神症状も完全に消失した.本例では肝硬変や門脈...

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Published in肝臓 Vol. 48; no. 9; pp. 463 - 468
Main Authors 前田, 登, 松久, 宗英, 馬屋原, 豊, 中澤, 哲郎, 東原, 大樹, 大須賀, 慶悟, 三上, 恒治, 松村, 太, 友田, 要, 中村, 仁信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2007
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.48.463

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Summary:45歳男性.8年前に腫瘤形成性膵炎に対し膵頭十二指腸切除術が施行された.3年前より頭呆感,異常行動,健忘などの精神症状や羽ばたき振戦が出現し高アンモニア血症による肝性脳症と診断された.腹部造影CTにて右精巣静脈を経由する上腸間膜静脈-下大静脈短絡(mesocaval shunt)を認めた.経皮経肝門脈造影では,SMV本幹に術後変化と思われる壁不整を認めるも有意な狭窄や圧較差を認めなかった.右内頚静脈から右精巣静脈経由にて短絡部を経カテーテル的に金属コイルにて塞栓した.血中アンモニア値は翌日より低下し,4年の観察期間中無投薬で正常値を保っている.また精神症状も完全に消失した.本例では肝硬変や門脈圧亢進症を認めず,膵術後の癒着や炎症を契機に後腹膜に短絡が発達したものと考えられた.経カテーテル的塞栓術は低侵襲的かつ有効な手段であり,第一選択の治療法と考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.48.463