心因性難聴に対する補聴器装用の試み 成人期まで改善することなく生活に支障を来した 1 例

要旨: 心因性難聴とは, 詐聴を除いた狭義の機能性難聴であり, 実際には音が聞こえていると考えられるにもかかわらず, 音が聞こえたと感じることができない疾患である。6~8割が軽快するため一般に予後良好といわれる一方で, 成人期まで症状が残存する例も存在するが, 有効な治療法は確立されていない。今回, 我々は小児期に発生した心因性難聴に心理療法や薬物投与を行ったが改善せず, 成人になっても症状が残存した症例を経験した。生活上の支障が大きかったため補聴器装用を試み, その臨床的意義を検討した。結果, 心因性難聴自体は一時的な改善にとどまったが, 補聴器装用時の QOL は改善し, 補聴器の常時装用...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 63; no. 4; pp. 226 - 233
Main Authors 鈴木, 大介, 中山, 梨絵, 坂本, 耕二, 御子柴, 卓弥, 大石, 直樹, 藤田, 航, 鈴木, 法臣, 岡田, 峻史, 新田, 清一, 小川, 郁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 30.08.2020
日本聴覚医学会
Subjects
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ISSN0303-8106
1883-7301
DOI10.4295/audiology.63.226

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Summary:要旨: 心因性難聴とは, 詐聴を除いた狭義の機能性難聴であり, 実際には音が聞こえていると考えられるにもかかわらず, 音が聞こえたと感じることができない疾患である。6~8割が軽快するため一般に予後良好といわれる一方で, 成人期まで症状が残存する例も存在するが, 有効な治療法は確立されていない。今回, 我々は小児期に発生した心因性難聴に心理療法や薬物投与を行ったが改善せず, 成人になっても症状が残存した症例を経験した。生活上の支障が大きかったため補聴器装用を試み, その臨床的意義を検討した。結果, 心因性難聴自体は一時的な改善にとどまったが, 補聴器装用時の QOL は改善し, 補聴器の常時装用が継続された。成人期にも症状が残存し, QOL を低下させる心因性難聴に対する治療法として補聴器が有用であることが示唆された。装用にあたっては音響外傷のリスクに十分留意し, 適切な最大出力制限を行うこと, 定期的な ASSR を施行することが必要である。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.63.226