In situ hybridization法にて確定したEBウイルス感染による特発性脾臓破裂の1例
Epstein-Barr(EB)ウイルス感染の経過中に脾臓破裂を来した 1 例を経験し,手術摘出標本におけるEBウイルスに対するin situ hybridization(ISH)法により脾臓への感染を証明し得たので報告する。症例は29歳の女性。 3 週間前より感冒様症状あり。 4 日前より心窩部痛が出現し,近医を受診したが症状は改善しなかった。前医にて腹部CT検査を施行し,脾臓破裂の診断にて当院ERセンターに紹介された。来院時CTにて脾下極にextravasationがあり, 2 度にわたる動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization; TAE)にて脾動...
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Published in | 日本救急医学会雑誌 Vol. 20; no. 6; pp. 317 - 324 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本救急医学会
2009
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Subjects | |
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Summary: | Epstein-Barr(EB)ウイルス感染の経過中に脾臓破裂を来した 1 例を経験し,手術摘出標本におけるEBウイルスに対するin situ hybridization(ISH)法により脾臓への感染を証明し得たので報告する。症例は29歳の女性。 3 週間前より感冒様症状あり。 4 日前より心窩部痛が出現し,近医を受診したが症状は改善しなかった。前医にて腹部CT検査を施行し,脾臓破裂の診断にて当院ERセンターに紹介された。来院時CTにて脾下極にextravasationがあり, 2 度にわたる動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization; TAE)にて脾動脈分枝をコイルで塞栓止血した。入院 3 日目に不穏行動あり,血液検査にて貧血が進行し,超音波検査にて腹腔内出血が増量していたため緊急に開腹術を施行した。脾臓は下極に 3 cmの裂創があり,下 3 分の 2 の被膜が剥がれて,同部からの出血が持続しており,脾全摘術を施行した。術後経過良好にて入院11日目に退院。入院初日の血清EBウイルス特異抗体結果などにより,初感染急性期と診断した。脾臓の病理診断は,白脾髄の辺縁や被膜下の赤脾髄に腫大したリンパ球が多く存在し,免疫染色とISH法の結果,このリンパ球はEBウイルスによる反応性T cellと判明し,脾臓へのEBウイルス感染を直接証明できた。被膜下血腫を主体とした特発性脾臓破裂症例では伝染性単核球症(infectious mononucleosis; IM)を原因の一つとして念頭に置くべきである。TAEなどの保存的治療を目指すべきであるが,被膜下血腫が広範囲に及ぶ場合は,循環動態が安定していても手術療法を考慮すべきである。 |
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ISSN: | 0915-924X 1883-3772 |
DOI: | 10.3893/jjaam.20.317 |