タコシールⓇ組織接着用シートによる術中アナフィラキシーショックの1例

症例は61歳男性,右中葉肺癌に対して右中葉切除術を行った.術中にタコシールⓇを2回使用し,1回目は上肺静脈に約1 cm2使用し,2回目は1時間後に肺瘻修復と先程の上肺静脈の追加補強のために約22 cm2使用した.その約10分後に,収縮期血圧が40 mmHg台まで急激に低下し,昇圧剤投与にも反応乏しく,血圧低値が続いた.術野に明らかな出血はなく,患者の顔面や頸部,上腕に紅潮・膨隆疹を認めたため,アナフィラキシーショックと判断した.タコシールⓇが原因である可能性を疑い,全てのタコシールⓇを除去し,生理食塩水で貼付部を洗浄した.約10分後に血圧は改善し,昇圧剤への反応は良好であった.後日,リンパ球刺...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 35; no. 2; pp. 172 - 175
Main Authors 石田, 裕人, 岡見, 次郎, 須﨑, 剛行, 楠, 貴志, 徳永, 俊照, 東山, 聖彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.03.2021
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Summary:症例は61歳男性,右中葉肺癌に対して右中葉切除術を行った.術中にタコシールⓇを2回使用し,1回目は上肺静脈に約1 cm2使用し,2回目は1時間後に肺瘻修復と先程の上肺静脈の追加補強のために約22 cm2使用した.その約10分後に,収縮期血圧が40 mmHg台まで急激に低下し,昇圧剤投与にも反応乏しく,血圧低値が続いた.術野に明らかな出血はなく,患者の顔面や頸部,上腕に紅潮・膨隆疹を認めたため,アナフィラキシーショックと判断した.タコシールⓇが原因である可能性を疑い,全てのタコシールⓇを除去し,生理食塩水で貼付部を洗浄した.約10分後に血圧は改善し,昇圧剤への反応は良好であった.後日,リンパ球刺激試験(DLST)を行い,2回目で陽性判定となったため,タコシールⓇによるアナフィラキシーショックと診断した.タコシールⓇによるアナフィラキシーショックは非常に稀であり,注意喚起も含めて報告する.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.35.172