耳鳴診療における課題と対策 音響療法とカウンセリング, 言語聴覚士の役割

要旨: わが国の耳鳴診療は TRT (Tinnitus Retraining Therapy) をベースに発展した。 TRT は, ①夜間の静寂回避に対する音響療法は, 具体的でないと苦痛がとれないことが多い。 ②難聴の耳鳴患者に対して補聴器は高い効果を得られるが, その活用は容易ではない。 という二つの課題が挙げられる。 当院の耳鳴診療は音響療法 (主に夜間の静寂回避と補聴器) の具体的な工夫を行うとともに, その音響療法が適切に実施されるための段階的なカウンセリングに重点をおいている。 当院の耳鳴診療の課題と治療成績を検討した。 当院での治療成績は耳鳴患者66名の THI (Tinnitu...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 63; no. 2; pp. 149 - 156
Main Authors 柘植, 勇人, 曾根, 三千彦, 井脇, 貴子, 加藤, 由記, 三宅, 杏季, 加藤, 大介, 藥師寺, 政美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 28.04.2020
日本聴覚医学会
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ISSN0303-8106
1883-7301
DOI10.4295/audiology.63.149

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Summary:要旨: わが国の耳鳴診療は TRT (Tinnitus Retraining Therapy) をベースに発展した。 TRT は, ①夜間の静寂回避に対する音響療法は, 具体的でないと苦痛がとれないことが多い。 ②難聴の耳鳴患者に対して補聴器は高い効果を得られるが, その活用は容易ではない。 という二つの課題が挙げられる。 当院の耳鳴診療は音響療法 (主に夜間の静寂回避と補聴器) の具体的な工夫を行うとともに, その音響療法が適切に実施されるための段階的なカウンセリングに重点をおいている。 当院の耳鳴診療の課題と治療成績を検討した。 当院での治療成績は耳鳴患者66名の THI (Tinnitus Handicap Inventory) 点数の推移を検討した。 平均点は耳鼻咽喉科初診時―耳鳴専門外来初回間, 耳鳴専門外来初回― 1 ヶ月後間, 1 ヶ月後―3ヶ月後間において有意な減少を認めた。 「高度の苦痛」 患者 (58~100点) の割合は48.5%から6ヶ月後に4.5%まで減少した。 対象患者66名中50名 (75.8%), 特に高度の苦痛患者32名中26名 (81.3%) の改善を認めた。 夜間の静寂回避のための音響療法と補聴器が奏効したと考える。 耳鳴診療が適切に行われるには, 医師や言語聴覚士などの診療スタッフの連携が肝要であると実感している。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.63.149