初療室でQT時間延長を伴わない多形性心室頻拍を呈した急性心筋梗塞の1例
症例は47歳の女性。胸背部痛のため救急要請をした。搬入時,脈拍101/min,血圧140/95 mmHg,体温33.6℃,SpO2 98%/自発呼吸・室内空気下のため酸素投与(10L/min)を開始した。意識清明,顔面蒼白,全身発汗著明,末梢冷感で胸部聴診上,有意な所見はなかった。12誘導心電図ではI・aVLおよびV2-V6にかけての広範なST上昇を認めた。直後に心電図モニター上,心室細動(ventricular fibrillation; VF)を認めた。呼びかけたが応答はなく,頸動脈拍動を触知できなかった。直ちに胸骨圧迫を開始した。除細動(二相性150J×1回)を施行してから約2分後に「痛...
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Published in | 日本救急医学会雑誌 Vol. 22; no. 7; pp. 344 - 349 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本救急医学会
2011
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-924X 1883-3772 |
DOI | 10.3893/jjaam.22.344 |
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Summary: | 症例は47歳の女性。胸背部痛のため救急要請をした。搬入時,脈拍101/min,血圧140/95 mmHg,体温33.6℃,SpO2 98%/自発呼吸・室内空気下のため酸素投与(10L/min)を開始した。意識清明,顔面蒼白,全身発汗著明,末梢冷感で胸部聴診上,有意な所見はなかった。12誘導心電図ではI・aVLおよびV2-V6にかけての広範なST上昇を認めた。直後に心電図モニター上,心室細動(ventricular fibrillation; VF)を認めた。呼びかけたが応答はなく,頸動脈拍動を触知できなかった。直ちに胸骨圧迫を開始した。除細動(二相性150J×1回)を施行してから約2分後に「痛い」と言って開眼し,頸動脈の拍動を触知することができた。VF確認から脈拍触知まで約3分30秒を要した。初療室での心電図モニター記録などから,洞調律から“R on T”,そして多形性心室頻拍(polymorphic ventricular tachycardia; PVT),更にVFへ移行したものと推測された。緊急冠動脈造影検査で,左前下行枝#6に90%,右冠動脈#2に50%の狭窄を認め,経皮的な冠動脈治療介入(percutaneous coronary intervention; PCI)を実施した。本症例はQT時間正常のPVTと考えられた。QT時間延長を伴わないPVTは冠動脈疾患の経過中に起こることが多いが,本症例もその例に漏れない。またPVT発症から10秒~数10秒以内にVFへ移行したものと推測され,直ちに心肺蘇生を開始せざるを得なかった。PCI後もPVTが再発しなかったため,冠血管への再灌流が十分に行われ,PCI施行後に虚血が残った可能性は低いと考えられた。“R on T”からPVTへ移行する過程が示されていることは比較的稀である。 |
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ISSN: | 0915-924X 1883-3772 |
DOI: | 10.3893/jjaam.22.344 |