腸間膜腫瘍手術後に消失した乳び胸の1例

乳び胸の発症原因は胸部外科手術後,外傷,胸部悪性腫瘍などが知られているが,腸間膜腫瘍に合併するものは,これまで報告されていない.今回,われわれは腸間膜腫瘍手術後に乳び胸が消失した興味深い病態を経験したので報告する.症例は78歳,女性.平成16年4月に左側腹部痛が出現し,この時の腹部CTで,腸間膜に石灰化を伴う腫瘤を指摘.外来経過観察されていたが,平成19年9月より増大傾向を示し,平成21年10月のCTでは小腸の浮腫,腹水出現のほか,下痢,栄養状態悪化も認めるため,当科入院となった.入院時に右胸水貯留があり胸腔穿刺を行ったところ乳び胸水であった.腫瘍切除を試みたが,上腸間膜動静脈を巻き込み,周囲...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 72; no. 6; pp. 1413 - 1416
Main Authors 大上, 博章, 渡部, 宜久, 坪島, 顕司, 小林, 巌, 的場, 保巳, 大野, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2011
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.72.1413

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Summary:乳び胸の発症原因は胸部外科手術後,外傷,胸部悪性腫瘍などが知られているが,腸間膜腫瘍に合併するものは,これまで報告されていない.今回,われわれは腸間膜腫瘍手術後に乳び胸が消失した興味深い病態を経験したので報告する.症例は78歳,女性.平成16年4月に左側腹部痛が出現し,この時の腹部CTで,腸間膜に石灰化を伴う腫瘤を指摘.外来経過観察されていたが,平成19年9月より増大傾向を示し,平成21年10月のCTでは小腸の浮腫,腹水出現のほか,下痢,栄養状態悪化も認めるため,当科入院となった.入院時に右胸水貯留があり胸腔穿刺を行ったところ乳び胸水であった.腫瘍切除を試みたが,上腸間膜動静脈を巻き込み,周囲との強い癒着があったため生検に止め,浮腫をきたした部分のみ小腸切除した.術後に胸水の貯留はなく,下痢,栄養状態も改善し良好な経過であった.乳び胸の発生に腹腔内腫瘍の関与が推察され,念頭に置くべきと考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.72.1413