鈍的腹部外傷後41年目に腸閉塞をきたした1例

鈍的腹部外傷後41年目に腸閉塞をきたした1例を経験したので報告する.症例は53歳,男性.12歳時に腹部を強打した既往があった.2007年7月下旬に腹痛で近医を受診し,投薬のみで軽快した.8月上旬に再び腹痛を認め近医を再受診,精査加療目的で当院紹介受診し,腸閉塞の診断で緊急入院となった.腹部造影CTおよびイレウス管造影検査で小腸の狭窄を認めたため開腹手術を施行した.開腹所見では小腸間膜はひきつれて広範囲に線状の線維性瘢痕を認め,その一部に索状物が形成されて腸間膜同士が癒着し,同部の小腸が屈曲,狭小化していた.索状物の切離と癒着剥離のみで小腸の狭窄は解除したため腸切除は行わず,術後経過は良好であっ...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 69; no. 6; pp. 1383 - 1386
Main Authors 白川, 幸代, 金田, 邦彦, 藤原, 英利, 西村, 透, 和田, 隆宏, 千堂, 宏義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2008
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.69.1383

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Summary:鈍的腹部外傷後41年目に腸閉塞をきたした1例を経験したので報告する.症例は53歳,男性.12歳時に腹部を強打した既往があった.2007年7月下旬に腹痛で近医を受診し,投薬のみで軽快した.8月上旬に再び腹痛を認め近医を再受診,精査加療目的で当院紹介受診し,腸閉塞の診断で緊急入院となった.腹部造影CTおよびイレウス管造影検査で小腸の狭窄を認めたため開腹手術を施行した.開腹所見では小腸間膜はひきつれて広範囲に線状の線維性瘢痕を認め,その一部に索状物が形成されて腸間膜同士が癒着し,同部の小腸が屈曲,狭小化していた.索状物の切離と癒着剥離のみで小腸の狭窄は解除したため腸切除は行わず,術後経過は良好であった.鈍的腹部外傷後,稀に遅発性の腸閉塞をきたすことがあるが,そのほとんどが受傷から1カ月以内に発症するとされている.自験例は受傷後41年という非常に長い期間を経過して腸閉塞を発症したきわめて興味深い症例と思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.69.1383