難治性前縦隔膿瘍を胸骨縦切開法で治療した1例

症例は30歳男性.初診1年前に右肺炎の既往がある.発熱と前胸部腫脹を主訴に来院し,CTで前縦隔膿瘍と傍胸骨を介して連続する皮下膿瘍を認めた.皮下膿瘍を切開しドレナージ施行,抗生剤投与にて膿瘍は肉眼的に消失した.外来にて経過観察していたが,10ヵ月後に縦隔膿瘍の再燃を来たした.右開胸縦隔ドレナージ術を施行したが,術後CTで膿瘍腔の遺残が判明した.術後3ヵ月後に再度増悪を来したので,根治的アプローチとして胸骨縦切開法を用いて縦隔膿瘍を郭清し良好な経過となった.本症例は,免疫不全などの明らかな基礎疾患のない若年男性において胸膜癒着を伴う肺炎が縦隔膿瘍に進展したものと推測される稀な1例である.また,低...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 29; no. 5; pp. 615 - 621
Main Authors 西田, 智喜, 住友, 伸一, 石川, 将史, 尾田, 博美, 山岸, 弘哉, 福井, 哲矢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 2015
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.29.615

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Summary:症例は30歳男性.初診1年前に右肺炎の既往がある.発熱と前胸部腫脹を主訴に来院し,CTで前縦隔膿瘍と傍胸骨を介して連続する皮下膿瘍を認めた.皮下膿瘍を切開しドレナージ施行,抗生剤投与にて膿瘍は肉眼的に消失した.外来にて経過観察していたが,10ヵ月後に縦隔膿瘍の再燃を来たした.右開胸縦隔ドレナージ術を施行したが,術後CTで膿瘍腔の遺残が判明した.術後3ヵ月後に再度増悪を来したので,根治的アプローチとして胸骨縦切開法を用いて縦隔膿瘍を郭清し良好な経過となった.本症例は,免疫不全などの明らかな基礎疾患のない若年男性において胸膜癒着を伴う肺炎が縦隔膿瘍に進展したものと推測される稀な1例である.また,低侵襲とされる胸腔鏡手術の普及や術後骨髄炎のリスクから,縦隔膿瘍のドレナージに胸骨正中切開法を選択する機会は減っていると考える.本症例から胸骨縦切開法は難治性の縦隔炎手術の適切な選択肢の1つになりうると考える.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.29.615