猩紅熱患者分離A群溶血レンサ球菌の薬剤感受性の変遷 (1956~1978年)
1956年から1978年までの期間に, 都立豊島病院に入院した猩紅熱患者で, 入院1週間以内に咽頭および鼻腔から分離した溶血レンサ球菌 (溶連菌) のうち, 主要流行菌型であるA群4, 6および12型の1,586株について各種薬剤に対する感受性を測定した.そのうち流行菌型との関係が深いtetracycline (TC), chloramphenicol (CP) およびerythromycin (EM) の成績について報告する. TC耐性株の最初の出現は, 1959年の1株 (6型) で, その後64年に4型の流行と共に耐性株が増加した.1968, 1969年はやや減少したが, 1970年から...
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Published in | 感染症学雑誌 Vol. 65; no. 7; pp. 820 - 832 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本感染症学会
01.07.1991
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ISSN | 0387-5911 1884-569X |
DOI | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.65.820 |
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Summary: | 1956年から1978年までの期間に, 都立豊島病院に入院した猩紅熱患者で, 入院1週間以内に咽頭および鼻腔から分離した溶血レンサ球菌 (溶連菌) のうち, 主要流行菌型であるA群4, 6および12型の1,586株について各種薬剤に対する感受性を測定した.そのうち流行菌型との関係が深いtetracycline (TC), chloramphenicol (CP) およびerythromycin (EM) の成績について報告する. TC耐性株の最初の出現は, 1959年の1株 (6型) で, その後64年に4型の流行と共に耐性株が増加した.1968, 1969年はやや減少したが, 1970年から再び増加し, 1973年以降は90%を超えて1978年には100%に達した. CP耐性株の最初の出現は, 1969年の1株 (4型) で, その後12型の流行と共に年々増加してきた. EM耐性株の最初の出現は, 1972年の30株 (12型) で, CP耐性株と同様に12型の増加と共に年々増加してきた. なお, 最小発育阻止濃度 (MIC) を測定した入院時分離株の1,586株のうち, TCには932株 (58.8%), CPには452株 (28.5%), EMには574株 (36.2%) が耐性を示した. 各菌型別の耐性の変化は, 1964年の4型の流行と共にTC耐性株が増加し, 1972年の12型の流行と共にCPおよびEM耐性株が増加したが, 6型は3薬剤に対する耐性株が少なかった. かくの如く, 常用薬剤に対する耐性獲得状況により菌型の流行が左右される現象がみられたことにより, 本来, 溶連菌の流行菌型は各型に対する免疫非獲得者の累積と関係するとされていたが, これに加えて耐性獲得も菌型の流行に大きな役割を演じていることが明らかになった. |
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ISSN: | 0387-5911 1884-569X |
DOI: | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.65.820 |