老人病棟における院内感染対策継続による菌血症及び院内肺炎の減少と起炎菌の変貌
A病院内科老人病棟においてMRSAが各種感染症の起炎菌として増加し, 1991年10月より本格的に開始された院内感染対策の成果を評価するために, 対策開始前の1991年1月から12月の期間と対策開始後の1992年3月から1993年3月までに発症した菌血症および院内肺炎の発生状況を調査し対策前と対策後において感染エピソード数をもとに臨床的解析を行った. 対策後の菌血症は, MRSA以外の菌種も含め対策前の1/2以下 (45.6%) に減少していることが明らかとなった. 起炎菌内訳ではMRSAを含むグラム陽性球菌が著明に減少していた. 対策後の菌血症感染原発巣は尿路系, IVHカテーテルおよび褥瘡...
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Published in | 感染症学雑誌 Vol. 69; no. 4; pp. 390 - 397 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本感染症学会
01.04.1995
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Summary: | A病院内科老人病棟においてMRSAが各種感染症の起炎菌として増加し, 1991年10月より本格的に開始された院内感染対策の成果を評価するために, 対策開始前の1991年1月から12月の期間と対策開始後の1992年3月から1993年3月までに発症した菌血症および院内肺炎の発生状況を調査し対策前と対策後において感染エピソード数をもとに臨床的解析を行った. 対策後の菌血症は, MRSA以外の菌種も含め対策前の1/2以下 (45.6%) に減少していることが明らかとなった. 起炎菌内訳ではMRSAを含むグラム陽性球菌が著明に減少していた. 対策後の菌血症感染原発巣は尿路系, IVHカテーテルおよび褥瘡の三者が感染原発巣の74.9%を占めていたが, 対策前に比し菌血症発症時のMRSA褥瘡保有例は全褥瘡保有患者の20.4%に減少していた. 一方対策後の院内肺炎は対策前の1/2以下 (44.8%) に減少し, 起炎菌内訳でMRSA単独およびMRSAとP. aeruginosaの混合感染エピソードが著明に減少していた. 対策後の菌血症および院内肺炎の減少は, 職員の清潔意識の向上と清潔操作の徹底に加え, 褥瘡対策による褥瘡保有者の減少と褥瘡の軽症化, 病原細菌上気道定着防止等の発症要因に基ずく局所的対策が主因となって功を奏した結果と考えられた. また環境対策による院内環境の清浄化も対策継続上重要な因子のひとつと考えられた. |
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ISSN: | 0387-5911 1884-569X |
DOI: | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.69.390 |