Neisseria meningitidis B群による流行性脳脊髄膜炎の感染経路と保菌者の除菌に関する検討

中国旅行中に咽頭痛, 寒気, 全身倦怠感を自覚した旅行者が帰宅した.その4日後, 混合性結合組織病 (MCTD) のため長期間ステロイド剤を内服中で, 自宅で療養していた妻が高熱, 意識障害, 出血斑, 血圧低下, チアノーゼのため入院した.患者の血液, 髄液よりNeisseria meningitidis B群が検出され, 流行性脳脊髄膜炎と診断されたが, 入院後24時間で典型的なWaterhouse-Friderichsen症候群のため死亡した. この感染経路を検討したところ, 夫の鼻腔, 咽頭より大量のN.meningitidisが分離され, 保菌者であることが確認された.さらに3ヵ月後...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 62; no. 3; pp. 194 - 199
Main Authors 和田, 光一, 村松, 芳幸, 田崎, 和之, 佐藤, 健比呂, 荒川, 正昭, 尾崎, 京子, 高野, 操
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.03.1988
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Summary:中国旅行中に咽頭痛, 寒気, 全身倦怠感を自覚した旅行者が帰宅した.その4日後, 混合性結合組織病 (MCTD) のため長期間ステロイド剤を内服中で, 自宅で療養していた妻が高熱, 意識障害, 出血斑, 血圧低下, チアノーゼのため入院した.患者の血液, 髄液よりNeisseria meningitidis B群が検出され, 流行性脳脊髄膜炎と診断されたが, 入院後24時間で典型的なWaterhouse-Friderichsen症候群のため死亡した. この感染経路を検討したところ, 夫の鼻腔, 咽頭より大量のN.meningitidisが分離され, 保菌者であることが確認された.さらに3ヵ月後, サルコイドーシスで入院した症例の咽頭より大量のN.meningitidisが分離され, この家人がやはり同一時期, 同一経路で中国旅行をしていることがわかり, これらの感染は輸入感染症の二次感染であると推定された.新潟地区の健常者30名, 2名の保菌者の濃厚接触者21名, 中国旅行を一緒にしたグループ15名, 計66名の鼻腔・咽頭培養では, 保菌者の6歳の男児1名のみからN.meningitidisが検出された.その男児の同級生31名の咽頭培養からは, N.meningitidisは検出されなかった. 次に, 保菌者3名のうち, 大人2名に対してはOfloxacm (OFLX) 600mg, 小児1名にはCefixime (CFIX) 100mgを使用したところ, 24時間後には除菌された.保菌者の濃厚接触者9人は, OFLX300mgを予防的に内服し, その後感染は認められなかった. 近年, 本邦の流行性脳脊髄膜炎, Waterhouse-Friderichsen症候群の報告では, 感染経路, 予防的化学療法について検討されたものはなく, また保菌者をOFLX, CFIXで除菌した症例は初めてである.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.62.194