塩化亜鉛水溶液処理による稲ワラパルプ高湿潤強度紙の製造

稲ワラ漂白化学パルプから調製した手すき紙に,塩化亜鉛水溶液を含浸させて高湿潤強度の紙を調製することを試みた。処理における塩化亜鉛水溶液の濃度,浸漬温度,浸漬時間,およびエタノール洗浄時間が紙の湿潤強度に与える影響を分析した。X線回折により,セルロース結晶構造の変化を調べ,走査型電子顕微鏡を用い,処理前後の紙の微細構造の変化を調べた。その結果,塩化亜鉛水溶液の濃度60%,浸漬温度65ºC,浸漬時間10分,および洗浄時間12分の条件で調製した手すき紙の湿潤強度が最も高く,処理前の手すき紙と比較すると,乾燥引張強さと乾燥破裂強さが約2倍,湿潤引張強さと湿潤破裂強さが約4倍に向上した。湿潤引張強さ/乾...

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Published in木材学会誌 Vol. 66; no. 1; pp. 46 - 52
Main Authors 許, 銀超, 金, 光范, 翟, 睿, 朱, 春鳳, 王, 立軍, 吴, 安波, 中川, 明子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本木材学会 25.01.2020
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Summary:稲ワラ漂白化学パルプから調製した手すき紙に,塩化亜鉛水溶液を含浸させて高湿潤強度の紙を調製することを試みた。処理における塩化亜鉛水溶液の濃度,浸漬温度,浸漬時間,およびエタノール洗浄時間が紙の湿潤強度に与える影響を分析した。X線回折により,セルロース結晶構造の変化を調べ,走査型電子顕微鏡を用い,処理前後の紙の微細構造の変化を調べた。その結果,塩化亜鉛水溶液の濃度60%,浸漬温度65ºC,浸漬時間10分,および洗浄時間12分の条件で調製した手すき紙の湿潤強度が最も高く,処理前の手すき紙と比較すると,乾燥引張強さと乾燥破裂強さが約2倍,湿潤引張強さと湿潤破裂強さが約4倍に向上した。湿潤引張強さ/乾燥引張強さ比は21.0%で,湿潤破裂強さ/乾燥破裂強さ比は21.6%であった。共に20%を超え,高湿潤強度紙の条件を満たすことができた。また,処理前後の手すき紙の表面形態の変化は著しいが,セルロース結晶構造および結晶化度の変化はないことが分かった。
ISSN:0021-4795
1880-7577
DOI:10.2488/jwrs.66.46