病原菌発育抑制性α-レンサ球菌の口腔内定着状況と喫煙, 含嗽の及ぼす口腔細菌叢への影響について

口腔細菌感染防御機構を構成する病原菌発育抑制作用を有するα-レンサ球菌の口腔内分布状況を検討した. 扁桃, 舌, 頬部, 歯肉, 唾液の5カ所における抑制性α-レンサ球菌の検出率は, S. pyogenes, S. aureusいずれに対しても, 扁桃分離株で高く, 口腔内で扁桃細菌叢の関与が高い可能性を示唆した. 喫煙に対する口腔細菌叢への影響を検討するために, 健康人における喫煙, 非喫煙者を比較した. 喫煙群ではS. aureusの検出率が高く, また, S. aureusに対して抑制性を示すα-レンサ球菌の検出率は低かった. 一方, S. pyogenesに対して, 抑制力を有するα-...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in感染症学雑誌 Vol. 69; no. 2; pp. 133 - 138
Main Authors 藤森, 功, 後藤, 領, 菊島, 一仁, 荻野, 純, 久松, 建一, 村上, 嘉彦, 山田, 俊彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.02.1995
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:口腔細菌感染防御機構を構成する病原菌発育抑制作用を有するα-レンサ球菌の口腔内分布状況を検討した. 扁桃, 舌, 頬部, 歯肉, 唾液の5カ所における抑制性α-レンサ球菌の検出率は, S. pyogenes, S. aureusいずれに対しても, 扁桃分離株で高く, 口腔内で扁桃細菌叢の関与が高い可能性を示唆した. 喫煙に対する口腔細菌叢への影響を検討するために, 健康人における喫煙, 非喫煙者を比較した. 喫煙群ではS. aureusの検出率が高く, また, S. aureusに対して抑制性を示すα-レンサ球菌の検出率は低かった. 一方, S. pyogenesに対して, 抑制力を有するα-レンサ球菌の検出率は, 喫煙群と非喫煙群の間で有意差を認められなかった. 喫煙者に対してはS. aureusが定着しやすい環境があり, β-lactamase産生による治療への影響を考慮すべきであると考えられた. 含漱に対する影響は, ポビドン・ヨード含嗽薬, 生理食塩水を用いて, 含嗽前後の菌量の比較で検討した. いずれも含嗽後, 常在細菌叢の代表としてのα-レンサ球菌の一時的な菌量の低下は認められた. ところが, 病原菌として検出された, A群レンサ球菌は, 含嗽後も菌量は低下せず, 保菌者における含嗽薬使用に関して留意する必要があると考えられた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.69.133