回結腸静脈経由に右門脈血栓を除去し左肝切除術を施行しえた肝門部領域胆管癌肉腫の1例

症例は81歳の男性で,他院通院中に肝機能障害を認め,精査目的に当院へ紹介となった.当院での腹部造影CTにて肝門部から左肝管に進展する腫瘍を認め,肝門部領域胆管癌の診断で手術の方針とした.術前に閉塞性黄疸が出現したため,内視鏡的胆道ドレナージ(endoscopic biliary drainage;EBD)tubeの留置を行った.処置後膵炎を生じ,CTにて炎症に起因すると思われる門脈本幹から右枝を充満する血栓を認めた.経上腸間膜動脈的に血栓溶解療法を施行するも,血栓の溶解に至らず,乳頭部から術後出血を併発したため,血栓確認後4日目に開腹下に回結腸静脈経由でカテーテルを留置し,門脈内血栓吸引術を施...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 56; no. 5; pp. 263 - 272
Main Authors 西村, 透, 上月, 章史, 前田, 詠理, 秋田, 真之, 森川, 達也, 阿部, 紘一郎, 田中, 智浩, 金田, 邦彦, 織田, 大介, 坂本, 憲昭, 今井, 幸弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.05.2023
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Summary:症例は81歳の男性で,他院通院中に肝機能障害を認め,精査目的に当院へ紹介となった.当院での腹部造影CTにて肝門部から左肝管に進展する腫瘍を認め,肝門部領域胆管癌の診断で手術の方針とした.術前に閉塞性黄疸が出現したため,内視鏡的胆道ドレナージ(endoscopic biliary drainage;EBD)tubeの留置を行った.処置後膵炎を生じ,CTにて炎症に起因すると思われる門脈本幹から右枝を充満する血栓を認めた.経上腸間膜動脈的に血栓溶解療法を施行するも,血栓の溶解に至らず,乳頭部から術後出血を併発したため,血栓確認後4日目に開腹下に回結腸静脈経由でカテーテルを留置し,門脈内血栓吸引術を施行した.門脈血流が再開したため,血栓治療開始後30日に左肝切除術・胆管切除術を施行した.病理診断は癌肉腫であった.現在術後3年が経過し,無再発生存中である.残肝予定の門脈に血栓を生じ,治療後に根治術を行った症例を経験したため報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2022.0044