複数回の重炭酸ナトリウム投与との関連が疑われた浸透圧性脱髄症候群の一例

60歳代の男性で2型糖尿病に対してメトホルミン内服加療中の患者が,急性腎障害および乳酸アシドーシスのため救急搬送され,重炭酸ナトリウム(Na)投与,透析加療を含めた集中治療を行ったが,加療中に浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome, ODS)を合併した症例を経験した。ODSは慢性的な低Na血症がなくても,急激な浸透圧変化があれば発症しうる。本症例では重度の代謝性アシドーシスに対して重炭酸Naを複数回投与したが,その後に血清Na値の上昇を認めており,ODS発症に影響した可能性があった。代謝性アシドーシスに対する重炭酸Na投与に関しては,有効性や投与方法を...

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Published in日本集中治療医学会雑誌 Vol. 29; no. 2; pp. 132 - 136
Main Authors 河村, 夏生, 西山, 千尋, 松本, 丈雄, 筒井, 徹, 髙場, 章宏, 吉廣, 尚大, 吉田, 研一, 櫻谷, 正明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本集中治療医学会 01.03.2022
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ISSN1340-7988
1882-966X
DOI10.3918/jsicm.29_132

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Summary:60歳代の男性で2型糖尿病に対してメトホルミン内服加療中の患者が,急性腎障害および乳酸アシドーシスのため救急搬送され,重炭酸ナトリウム(Na)投与,透析加療を含めた集中治療を行ったが,加療中に浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome, ODS)を合併した症例を経験した。ODSは慢性的な低Na血症がなくても,急激な浸透圧変化があれば発症しうる。本症例では重度の代謝性アシドーシスに対して重炭酸Naを複数回投与したが,その後に血清Na値の上昇を認めており,ODS発症に影響した可能性があった。代謝性アシドーシスに対する重炭酸Na投与に関しては,有効性や投与方法を含めてまだエビデンスは不十分である。投与の際には,有害事象の1つである高Na血症について十分なモニタリングを行い,慎重に投与適応を判断する必要がある。
ISSN:1340-7988
1882-966X
DOI:10.3918/jsicm.29_132