歯学部並びに歯科衛生士学校の学生を対象に実施したB型及びC型肝炎に対しての意識調査

現在, わが国では, 輸血に起因するB型肝炎ウイルス (HBV) やC型肝炎ウイルス (HCV) の感染はほとんど見られなくなった. しかし, 全国調査によると散発性のB型やC型急性肝炎例の発生が毎年報告され, 医原性感染によるウイルス肝炎も報告されている. 私共は, 歯科診療時の肝炎ウイルスに対する感染予防対策についての教育や啓発が重要であると考え, 某大学歯学部と歯科衛生士学校の学生全352名を対象にB型肝炎やC型肝炎に関連した知識や感染予防についての認識度についてアンケート調査を実施した. 全体の35.5%の学生が, 交叉感染の防御よりも術者自身の感染防御を重要視していた. さらに, デ...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 78; no. 7; pp. 554 - 565
Main Authors 千葉, 逸朗, 佐田, 通夫, 長尾, 由実子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.07.2004
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.78.554

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Summary:現在, わが国では, 輸血に起因するB型肝炎ウイルス (HBV) やC型肝炎ウイルス (HCV) の感染はほとんど見られなくなった. しかし, 全国調査によると散発性のB型やC型急性肝炎例の発生が毎年報告され, 医原性感染によるウイルス肝炎も報告されている. 私共は, 歯科診療時の肝炎ウイルスに対する感染予防対策についての教育や啓発が重要であると考え, 某大学歯学部と歯科衛生士学校の学生全352名を対象にB型肝炎やC型肝炎に関連した知識や感染予防についての認識度についてアンケート調査を実施した. 全体の35.5%の学生が, 交叉感染の防御よりも術者自身の感染防御を重要視していた. さらに, ディスポーザブルの手袋や局所麻酔薬のカートリッジを再使用してもよいと考える学生の割合は, 各々13.1% (46/352名), 14.8% (52/352名) であった. HBVやHCVが血液だけでなく唾液などの体液からも検出されるという認識を持つ学生は65.3%に留まっており, 肝炎ウイルスの知識や器具の消毒と滅菌に関する理解が低い実態が明らかになった. 国内の歯科治療における院内感染防止の標準化を目指したガイドラインの早急な作成と歯科医療に従事する学生に対する感染のリスクマネージメントを重視したカリキュラムの導入と教育が必要である. さらに, 歯科医療にスタンダードプレコーションの考えを普及することが重要な課題であると思われる.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.78.554