肝動注化学療法開始後に高度の血小板減少を来しヘパリン起因性血小板減少症が疑われた進行肝細胞癌の1例
症例は72歳男性.C型肝炎を背景に発症した門脈本幹腫瘍塞栓を伴う多発性肝細胞癌(HCC)に対して,大腿動脈アプローチでリザーバーシステムを留置した後に同日より肝動注療法(low dose FP療法)を開始し,一旦退院となった.しかし,治療開始後16日目の外来受診時に血小板数が0.3×104/μLと著明な減少を認めたために緊急入院となった.赤血球数,白血球数は正常であり,骨髄穿刺所見もほぼ正常であった.播種性血管内凝固症候群,特発性血小板減少性紫斑病などとの鑑別が問題となったが,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体が陽性であったために,HITを強く疑った.ヘパリンの投与中止およびアルガトロバ...
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Published in | 肝臓 Vol. 58; no. 12; pp. 647 - 653 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本肝臓学会
2017
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0451-4203 1881-3593 |
DOI | 10.2957/kanzo.58.647 |
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Summary: | 症例は72歳男性.C型肝炎を背景に発症した門脈本幹腫瘍塞栓を伴う多発性肝細胞癌(HCC)に対して,大腿動脈アプローチでリザーバーシステムを留置した後に同日より肝動注療法(low dose FP療法)を開始し,一旦退院となった.しかし,治療開始後16日目の外来受診時に血小板数が0.3×104/μLと著明な減少を認めたために緊急入院となった.赤血球数,白血球数は正常であり,骨髄穿刺所見もほぼ正常であった.播種性血管内凝固症候群,特発性血小板減少性紫斑病などとの鑑別が問題となったが,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体が陽性であったために,HITを強く疑った.ヘパリンの投与中止およびアルガトロバン20 mg/日の投与を開始したが,血小板数の回復がほとんど見られず,ヘパリン化親水性カテーテルも抜去した.その後緩やかに血小板数の上昇を認めたが,HCCの病勢進行を認め,動注療法開始後39日目に永眠された. |
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ISSN: | 0451-4203 1881-3593 |
DOI: | 10.2957/kanzo.58.647 |