多列検出器CTが有用だった頭部顔面外傷の2例

緊急手術が必要となった頭部顔面の複合外傷症例において, MDCTを用いた術前検索が有用であった症例を経験したので報告する。症例1 : 25歳の男性, 交通事故で右前頭部をえぐられて救急搬入され, 頭頸部, 胸腹部をそれぞれMDCTにて検索した。その結果, 顔面皮膚欠損, 前頭骨開放骨折, 脳脱, 右眼球破裂, 下顎骨骨折, 第一頸椎破裂骨折と診断して緊急手術を行ったが, 手術時の頭頸部位置決めに際して, MDCTの三次元画像と再構成した頸椎の矢状断像が極めて有用であった。症例2 : 65歳の男性, 労災で前額部を受傷し当センターへ搬送された。前額部から眼窩にかけて一部骨の露出を伴う陥没と裂傷を...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 18; no. 1; pp. 17 - 22
Main Authors 加藤, 正哉, 神田, 大, 阿野, 正樹, 長谷川, 伸之, 安里, 満信, 山下, 圭輔, 鈴川, 正之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2007
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.18.17

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Summary:緊急手術が必要となった頭部顔面の複合外傷症例において, MDCTを用いた術前検索が有用であった症例を経験したので報告する。症例1 : 25歳の男性, 交通事故で右前頭部をえぐられて救急搬入され, 頭頸部, 胸腹部をそれぞれMDCTにて検索した。その結果, 顔面皮膚欠損, 前頭骨開放骨折, 脳脱, 右眼球破裂, 下顎骨骨折, 第一頸椎破裂骨折と診断して緊急手術を行ったが, 手術時の頭頸部位置決めに際して, MDCTの三次元画像と再構成した頸椎の矢状断像が極めて有用であった。症例2 : 65歳の男性, 労災で前額部を受傷し当センターへ搬送された。前額部から眼窩にかけて一部骨の露出を伴う陥没と裂傷を認めたため, 頭部・顔面・頸部のMDCTを撮影した。これにより前頭骨・上顎骨・篩骨洞粉砕骨折, 両側眼球破裂, 頭蓋底開放骨折, 脳挫傷と診断した。直ちに脳神経外科, 耳鼻科, 眼科の共同で緊急手術を行い, 視機能障害と臭覚障害は残したものの良好な転帰をたどった。頭部顔面外傷の多くは意識障害を伴うため, 一般的な頸椎固定解除基準に則った管理が困難で, 急性期の頸椎保護継続を余儀なくされるが, MDCTで得られる三次元画像や再構成した冠状断・矢状断画像を活用することで, 短時間に頸椎クリアランスを行うことができた。また複数の診療科が協力して手術を行う場合, 診療科毎に求められる画像情報を再構成した三次元画像でまかなうことが可能であり, 術前画像診断に要する時間を短縮できることが期待された。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.18.17