妊娠中に発症し胎児に腹水を認めた自己免疫性肝炎の1例

症例は31歳女性.第2子の妊娠14週頃に皮膚搔痒感と不眠を自覚し始めた.妊娠20週に同僚から皮膚および眼球結膜の黄染を指摘され,近医を受診したところ,肝障害(黄疸)を指摘された.肝庇護剤の投与が開始されたが,黄疸はさらに増強した.この時点では抗核抗体は陰性であった.当院産婦人科での入院精査では,母体肝機能の低下に加え,胎児腹水の貯留も認められた.しかし胎児胸水は認められず,典型的な胎児水腫とは異なる病像であった.本人および家族の希望により,妊娠21週6日目に人工妊娠中絶が施行された.人工妊娠中絶後,肝機能は速やかに改善傾向を示したものの,中絶後2週目に再び増悪してきたため,原因精査のため当科に...

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Published in肝臓 Vol. 54; no. 11; pp. 780 - 786
Main Authors 有永, 照子, 上妻, 友隆, 嘉村, 敏治, 堀, 大蔵, 古賀, 浩徳, 佐田, 通夫, 伏見, 崇, 鳥村, 拓司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2013
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.54.780

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Summary:症例は31歳女性.第2子の妊娠14週頃に皮膚搔痒感と不眠を自覚し始めた.妊娠20週に同僚から皮膚および眼球結膜の黄染を指摘され,近医を受診したところ,肝障害(黄疸)を指摘された.肝庇護剤の投与が開始されたが,黄疸はさらに増強した.この時点では抗核抗体は陰性であった.当院産婦人科での入院精査では,母体肝機能の低下に加え,胎児腹水の貯留も認められた.しかし胎児胸水は認められず,典型的な胎児水腫とは異なる病像であった.本人および家族の希望により,妊娠21週6日目に人工妊娠中絶が施行された.人工妊娠中絶後,肝機能は速やかに改善傾向を示したものの,中絶後2週目に再び増悪してきたため,原因精査のため当科にて肝生検をおこなった.その結果,リンパ球を主体とした高度炎症細胞浸潤やロゼット様構造など自己免疫性肝炎(AIH)に特徴的な組織学的所見が得られた.この時点で陽性化していた抗核抗体およびHLA-DR4陽性などの血清学的所見を加味し,「definite AIH(国際診断基準)」と診断した.診断後直ちにステロイドの内服を開始した結果,肝機能は改善した.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.54.780