腹腔鏡下胆嚢摘出術時の落下結石による腹壁膿瘍の1例
患者は63歳,男性.平成21年1月に当院で,胆石・胆嚢炎に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術中に胆嚢壁の損傷をきたし,胆汁の流出・結石の落下を認めたが,回収困難であった.術後合併症なく軽快退院した.平成22年12月に右背部痛と同部の腫脹を主訴に再診.CT・MRI検査にて,肝後区域背側に内部に石灰化を伴う腹腔内膿瘍を認め,膿瘍が後腹膜から皮下へと進展していた.落下結石に起因する膿瘍と診断し,平成23年2月,膿瘍ドレナージおよび結石除去術を施行した.皮下膿瘍を切開すると,膿の流出と小結石の排出を認め,さらに深部には腹腔内と交通する瘻孔を認めた.腹腔内の膿瘍腔にも小結石を認めた.術後経過は良好で第...
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 73; no. 10; pp. 2642 - 2646 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
2012
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.73.2642 |
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Summary: | 患者は63歳,男性.平成21年1月に当院で,胆石・胆嚢炎に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術中に胆嚢壁の損傷をきたし,胆汁の流出・結石の落下を認めたが,回収困難であった.術後合併症なく軽快退院した.平成22年12月に右背部痛と同部の腫脹を主訴に再診.CT・MRI検査にて,肝後区域背側に内部に石灰化を伴う腹腔内膿瘍を認め,膿瘍が後腹膜から皮下へと進展していた.落下結石に起因する膿瘍と診断し,平成23年2月,膿瘍ドレナージおよび結石除去術を施行した.皮下膿瘍を切開すると,膿の流出と小結石の排出を認め,さらに深部には腹腔内と交通する瘻孔を認めた.腹腔内の膿瘍腔にも小結石を認めた.術後経過は良好で第9病日に退院した.落下胆石に起因する膿瘍形成の要因として胆嚢炎,感染胆汁,ビリルビン結石,遺残結石の個数があげられる.頻度は低いものの落下胆石を認めた際には,考慮すべき合併症の一つとして考え報告する. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.73.2642 |