静脈壁内血腫を示唆するCT所見を呈した腹部鈍的外傷による下大静脈損傷の1例
動脈や腸管における壁内血腫の発生はしばしば認められるが,静脈における壁内血腫の報告は見当たらない。我々は,鈍的外傷により下大静脈壁内血腫が示唆されるCT所見を認めた症例を経験したので報告する。症例は37歳男性。ラクビーの試合中に相手のタックルを右下腹部に受け,痛みが持続するため救急搬送された。来院時,意識は清明であり,呼吸循環は安定していた。腹部造影CT検査で,右側優位に後腹膜血腫を認め,右腸骨静脈末梢側の血流うっ滞と中枢側の血管虚脱,下大静脈においてはほぼ血管内全周性の血腫と血管内腔の狭小化を認めた。以上から,タックルという鈍的外傷により生じた,腸骨静脈損傷からの後腹膜血腫と診断し,下大静脈...
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Published in | 日本救急医学会雑誌 Vol. 25; no. 12; pp. 885 - 891 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本救急医学会
2014
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Subjects | |
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Summary: | 動脈や腸管における壁内血腫の発生はしばしば認められるが,静脈における壁内血腫の報告は見当たらない。我々は,鈍的外傷により下大静脈壁内血腫が示唆されるCT所見を認めた症例を経験したので報告する。症例は37歳男性。ラクビーの試合中に相手のタックルを右下腹部に受け,痛みが持続するため救急搬送された。来院時,意識は清明であり,呼吸循環は安定していた。腹部造影CT検査で,右側優位に後腹膜血腫を認め,右腸骨静脈末梢側の血流うっ滞と中枢側の血管虚脱,下大静脈においてはほぼ血管内全周性の血腫と血管内腔の狭小化を認めた。以上から,タックルという鈍的外傷により生じた,腸骨静脈損傷からの後腹膜血腫と診断し,下大静脈に関しては壁内血腫が疑われた。保存的経過観察を施行した。下大静脈壁内血腫は徐々に縮小傾向であったが,右腸骨静脈から末梢に血栓を認めたため,下大静脈フィルター挿入し,抗凝固療法を開始した。その後,下肢静脈血栓は縮小傾向であり,抗凝固療法もコントロールでき,下大静脈フィルターを抜去し,外来経過観察とした。 |
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ISSN: | 0915-924X 1883-3772 |
DOI: | 10.3893/jjaam.25.885 |