C型慢性肝炎に対する3剤併用治療中に発症したアメーバ性肝膿瘍の1例
症例は58歳の男性.1型,高ウイルス量のC型慢性肝炎に対し,3剤併用療法を開始した.投与1カ月後にはHCVRNAは検出されず,副作用もなく経過していたが,投与開始約4カ月目に食思不振,発熱,右季肋部痛が出現した.白血球数9,100/μl,CRP 15.17 mg/dlと炎症所見を呈し,超音波検査,断層撮影検査にて多発性の肝膿瘍を認めた.細菌性肝膿瘍を疑い,抗生剤の投与を開始したが,解熱は得られず,肝膿瘍は増大し,一部は腹腔へ膨出した.入院時の血清アメーバ抗体価が高値を示し,肝膿瘍の穿刺内容液は粘稠で白色~薄黄緑色のクリーム状を呈した.穿刺内容液中に赤痢アメーバ虫体を確認し,アメーバ性肝膿瘍と診...
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Published in | 肝臓 Vol. 54; no. 11; pp. 787 - 795 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本肝臓学会
2013
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0451-4203 1881-3593 |
DOI | 10.2957/kanzo.54.787 |
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Summary: | 症例は58歳の男性.1型,高ウイルス量のC型慢性肝炎に対し,3剤併用療法を開始した.投与1カ月後にはHCVRNAは検出されず,副作用もなく経過していたが,投与開始約4カ月目に食思不振,発熱,右季肋部痛が出現した.白血球数9,100/μl,CRP 15.17 mg/dlと炎症所見を呈し,超音波検査,断層撮影検査にて多発性の肝膿瘍を認めた.細菌性肝膿瘍を疑い,抗生剤の投与を開始したが,解熱は得られず,肝膿瘍は増大し,一部は腹腔へ膨出した.入院時の血清アメーバ抗体価が高値を示し,肝膿瘍の穿刺内容液は粘稠で白色~薄黄緑色のクリーム状を呈した.穿刺内容液中に赤痢アメーバ虫体を確認し,アメーバ性肝膿瘍と診断した.メトロニダゾールの投与ならびに経皮的ドレナージにて速やかな解熱,膿瘍の縮小が得られた.患者は3剤併用治療の開始5カ月前に原因不明の下痢を来し,大腸内視鏡検査にて大腸に多発するアフタ性病変が認められていたことが後に判明した.遡及的診断ではアメーバ腸炎と考えられたが,感染経路は不明であった.C型慢性肝炎に対する3剤併用療法時の併発感染症疾患のひとつとしてアメーバ性肝膿瘍も念頭に置く必要がある.アメーバ性肝膿瘍の迅速な診断,問診の重要性があらためて認識された. |
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ISSN: | 0451-4203 1881-3593 |
DOI: | 10.2957/kanzo.54.787 |