潰瘍性大腸炎に対する結腸全摘術後49年目に発生した回腸癌の1例

症例は68歳,女性.19歳時に他院で潰瘍性大腸炎(以下UCと略記)に対し結腸全摘術,回腸直腸吻合術を施行された.術後49年目に当院内科を受診した際,高度の貧血を指摘され精査加療目的に入院となった.貧血の原因は特発性赤芽球癆と診断され,免疫抑制剤の投与により改善したが,貧血の精査目的に施行した下部消化管内視鏡検査で回腸直腸吻合部近傍の回腸に腫瘍性病変を認めた.生検の結果,印環細胞癌の診断で,回腸部分切除術を施行した.切除標本では筋層までの浸潤を認め,リンパ節転移を1個認めた.以前はUCに関連した小腸癌の発生はないとされていたが,近年,頻度は少ないが長期罹患UC患者に発生した回腸癌が報告されている...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 10; pp. 2086 - 2090
Main Authors 森松, 克哉, 亀岡, 宣久, 山中, 直樹, 林, 昌孝, 横畑, 和紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.79.2086

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Summary:症例は68歳,女性.19歳時に他院で潰瘍性大腸炎(以下UCと略記)に対し結腸全摘術,回腸直腸吻合術を施行された.術後49年目に当院内科を受診した際,高度の貧血を指摘され精査加療目的に入院となった.貧血の原因は特発性赤芽球癆と診断され,免疫抑制剤の投与により改善したが,貧血の精査目的に施行した下部消化管内視鏡検査で回腸直腸吻合部近傍の回腸に腫瘍性病変を認めた.生検の結果,印環細胞癌の診断で,回腸部分切除術を施行した.切除標本では筋層までの浸潤を認め,リンパ節転移を1個認めた.以前はUCに関連した小腸癌の発生はないとされていたが,近年,頻度は少ないが長期罹患UC患者に発生した回腸癌が報告されている.大腸全摘術施行後の長期罹患UC患者に対しては回腸癌の発生に対し留意し,定期的に回腸嚢の観察を行う必要があると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.2086