腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術中に乳糜腹水で発見された腸間膜脂肪織炎の1例

患者は72歳,男性.右内鼠径ヘルニアの診断で腹腔鏡下ヘルニア修復術を開始したが,腹膜切開後に腸間膜に白色顆粒状変化を伴う乳糜腹水を認めた.手術時には乳糜腹水の原因が不明であったので,異物留置による感染を危惧し,ヘルニアメッシュの留置を中止し,腹腔鏡下にiliopubic tract repairを施行した.術中採取した腸間膜生検と腹水検査の結果から術後に腸間膜脂肪織炎と診断した.腸間膜脂肪織炎は非特異的な腸間膜の炎症で,病理学的に脂肪変性やマクロファージの浸潤を認める.術前の血液・画像検査では腹水や炎症の所見がなく診断できなかった.手術後は脂肪織炎の悪化はなく退院した.腹腔鏡下手術中,無症状の...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 12; pp. 2755 - 2760
Main Authors 小丹枝, 裕二, 服部, 優宏, 土橋, 誠一郎, 佐藤, 正法
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.78.2755

Cover

More Information
Summary:患者は72歳,男性.右内鼠径ヘルニアの診断で腹腔鏡下ヘルニア修復術を開始したが,腹膜切開後に腸間膜に白色顆粒状変化を伴う乳糜腹水を認めた.手術時には乳糜腹水の原因が不明であったので,異物留置による感染を危惧し,ヘルニアメッシュの留置を中止し,腹腔鏡下にiliopubic tract repairを施行した.術中採取した腸間膜生検と腹水検査の結果から術後に腸間膜脂肪織炎と診断した.腸間膜脂肪織炎は非特異的な腸間膜の炎症で,病理学的に脂肪変性やマクロファージの浸潤を認める.術前の血液・画像検査では腹水や炎症の所見がなく診断できなかった.手術後は脂肪織炎の悪化はなく退院した.腹腔鏡下手術中,無症状の同疾患を偶発的に認めた場合の対応を検討していく必要があると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.2755