腹腔鏡下胃空腸バイパス術を行った腐食性胃炎後幽門前庭部狭窄の1例

腐食性胃炎は組織障害性の強い物質の飲用により生じ,粘膜びらんから瘢痕狭窄まで様々な病態を呈する.保存的加療が有効であったとの報告もあるが,外科的治療が必要となる症例も少なくない.今回,洗濯用洗剤の服用により幽門前庭部狭窄をきたした腐食性胃炎に対し,外科的介入を行った1例を経験したので報告する.症例は45歳,女性.コーヒー色嘔吐を主訴に前医を受診した.上部消化管内視鏡検査を行い,急性胃炎の診断で同日入院となった.入院翌日に自傷目的で弱アルカリ性の洗濯用洗剤を多量服用したことが判明し,腐食性胃炎の診断で当院へ転院となった.保存的加療で胃体部の炎症は改善したが,幽門前庭部に高度の瘢痕狭窄が残存したた...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 10; pp. 2022 - 2027
Main Authors 柳田, 茂寛, 小田原, 晃, 松下, 大輔, 有上, 貴明, 大久保, 啓史, 夏越, 祥次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.81.2022

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Summary:腐食性胃炎は組織障害性の強い物質の飲用により生じ,粘膜びらんから瘢痕狭窄まで様々な病態を呈する.保存的加療が有効であったとの報告もあるが,外科的治療が必要となる症例も少なくない.今回,洗濯用洗剤の服用により幽門前庭部狭窄をきたした腐食性胃炎に対し,外科的介入を行った1例を経験したので報告する.症例は45歳,女性.コーヒー色嘔吐を主訴に前医を受診した.上部消化管内視鏡検査を行い,急性胃炎の診断で同日入院となった.入院翌日に自傷目的で弱アルカリ性の洗濯用洗剤を多量服用したことが判明し,腐食性胃炎の診断で当院へ転院となった.保存的加療で胃体部の炎症は改善したが,幽門前庭部に高度の瘢痕狭窄が残存したため受傷後43日目に不完全胃離断を伴う腹腔鏡下胃空腸バイパス術を施行した.腐食性胃炎に伴う高度の瘢痕狭窄は保存的治療に抵抗性であることも多く,腹腔鏡下バイパス術は有効な治療選択肢の一つと思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.2022