腹腔鏡下手術を施行したupside down stomachを呈する食道裂孔ヘルニアの1例

症例は70歳代,男性.背部痛と季肋部痛の精査加療目的に紹介となった.上部消化管造影検査では胃穹窿部は腹腔内に存在していたが,胃体部から幽門前庭部までは縦隔内に脱出し間膜軸性捻転をきたしていた.またCTでは横行結腸の縦隔内への脱出も認めた.以上より,upside down stomachと横行結腸脱出を伴う食道裂孔ヘルニアと診断し,腹腔鏡下手術を行った.懸念していた横行結腸は腹腔内に存在しており,胃を腹腔内に還納し,開大した食道裂孔を縫縮閉鎖した後にNissen噴門形成術を施行した.臓器の牽引や剥離に難渋したが,腹腔鏡下に完遂しえた.第8病日に軽快退院となり,術後2年3カ月が経過した現在,再発は...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 73; no. 11; pp. 2813 - 2818
Main Authors 丹黒, 章, 古北, 由仁, 武知, 浩和, 森本, 雅美, 後藤, 正和, 山本, 洋太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2012
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.73.2813

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Summary:症例は70歳代,男性.背部痛と季肋部痛の精査加療目的に紹介となった.上部消化管造影検査では胃穹窿部は腹腔内に存在していたが,胃体部から幽門前庭部までは縦隔内に脱出し間膜軸性捻転をきたしていた.またCTでは横行結腸の縦隔内への脱出も認めた.以上より,upside down stomachと横行結腸脱出を伴う食道裂孔ヘルニアと診断し,腹腔鏡下手術を行った.懸念していた横行結腸は腹腔内に存在しており,胃を腹腔内に還納し,開大した食道裂孔を縫縮閉鎖した後にNissen噴門形成術を施行した.臓器の牽引や剥離に難渋したが,腹腔鏡下に完遂しえた.第8病日に軽快退院となり,術後2年3カ月が経過した現在,再発は認めていない.本邦における本疾患に対する腹腔鏡下手術の報告は少なく,その低侵襲性や治療効果は担保されていたが,手術難易度からも内視鏡外科手術に精通した医師が施行することが望ましいと考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.73.2813